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〈今日の予定は?〉
既読はつかない。明日までに分かれば良いやとスマホをポケットにしまうと、視野にいきなり小さな男の子が二人、走り去っていった。僕は「おっと」と飛びのくと、公園の方に目を向けた。ベンチには一人の女の子が座っていて、その子を囲うように四人の女子が立っていた。みな僕と同じ高校の制服を着ているが、見なれない顔だった。上級生だろうか?
「なんか、ヤな感じ……」
僕はすぐそこに漂う異様な空気を察した。
(イジメかな)
いつもの僕なら無視していたと思う。でもなぜか僕の嗅覚がひき止めた。
「こんにちは、先輩たち! なにしてるんですかぁ?」
僕はいつものぶりっ子な声で駆け寄った。すると四人の女子が一斉に僕を見て「一年の塩川アイ」とフルネームでつぶやいた。
「そうです! なにしてるんですか?」
彼女たちは僕を〈見上げて〉いる。僕はさらに追い詰めるように見下ろした。
「な、なんでもない……」
四人は「行こう」と公園を走り去っていった。
僕はとても〈かわいい〉んだけど、牛乳を愛してやまないせいで身長は一八〇センチもある。かわいい顔で高身長って、結構怖いらしい。まあ、僕は気にしないけど……。
「大丈夫?」
僕はベンチに縮こまっている女の子を見下ろした。
長い前髪。太い三つ編みが耳の脇に一本ずつ。大きな丸メガネ。
(なんって地味な女だろう)
憐れむように僕は見下ろしていると、その子はスッと僕を見上げた。
「――なんで助けたんですか」
「……え?」
「助けてなんて言ってないです」
「……そ、そうだけど、でも」
「もしかしてあなたもこれが目当てなんですか」
そう言ってその子は小さな紙袋を取り出した。
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