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屋上のドアを開け、階段の手すりを使って滑り下りる。
このビルは廃虚になっているし、人がいることはないはず。
なのだが。ズボンの裾に隠していた拳銃に手をかける。
アルバのために切った裾とは逆側だ。
今夜はやけに銃声が響く。
自分が撃ったのは一発なのに。
咄嗟に手すりから下りて弾を避ける。
そのまま撃った相手に飛びかかって、拳銃を弾いた。
首の後ろに手刀を入れて気を失わせる。
目標を撃った銃は屋上に置いてある。
後で回収しようかとも思ったが、それもこの状況では無理だろう。
母親の唯一の形見だったのだが仕方があるまい。
奪い取った拳銃を拾い、階段をさらに駆け下りていく。
自分の身を守るのが一番だ。
「シアネアか?」
階下のざわめきが聞こえる。
このビルは、最初から。
ちっ、と舌打ちをして拾った拳銃で威嚇射撃をする。
もっとも、効果はないだろうが。
「ボスを守れ!」
ざわめきの中で統制を取ろうとする者が現れる。
ざわめきから判断すると、十人はいる。
まともに戦ったのでは勝ち目はない。
なら、まともに戦わなければいいのだ。
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