アンダーグラウンド

4/8
前へ
/8ページ
次へ
屋上のドアを開け、階段の手すりを使って滑り下りる。 このビルは廃虚になっているし、人がいることはないはず。 なのだが。ズボンの裾に隠していた拳銃に手をかける。 アルバのために切った裾とは逆側だ。 今夜はやけに銃声が響く。 自分が撃ったのは一発なのに。 咄嗟に手すりから下りて弾を避ける。 そのまま撃った相手に飛びかかって、拳銃を弾いた。 首の後ろに手刀を入れて気を失わせる。 目標を撃った銃は屋上に置いてある。 後で回収しようかとも思ったが、それもこの状況では無理だろう。 母親の唯一の形見だったのだが仕方があるまい。 奪い取った拳銃を拾い、階段をさらに駆け下りていく。 自分の身を守るのが一番だ。 「シアネアか?」 階下のざわめきが聞こえる。 このビルは、最初から。 ちっ、と舌打ちをして拾った拳銃で威嚇射撃をする。 もっとも、効果はないだろうが。 「ボスを守れ!」 ざわめきの中で統制を取ろうとする者が現れる。 ざわめきから判断すると、十人はいる。 まともに戦ったのでは勝ち目はない。 なら、()()()に戦わなければいいのだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加