アンダーグラウンド

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ロセアの噂。 この話をするには、まずプルプレアという者の説明からしなくてはいけない。 プルプレアは小規模な組織、ルテオラのボスだった。 ルテオラは小規模ながらも多くの情報を集め、依頼された仕事は必ず遂行すると話題だった。 多くの組織やチームのリーダーが、ルテオラによって殺された。 そんなルテオラに、スパイとして潜り込んでいたのがロセアだった。 ロセアはいつも、かなり危険な綱渡りをしていた。 相手の懐に潜り込むためには、自らの身体を使うことも厭わなかったという。 プルプレアに対しても、例外ではなかったらしい。 ただ、ロセアはこの仕事の時に決定的なミスを犯した。 子を孕んだのだ。 らしくないミスだった。 後に聞けば、この時ロセアはプルプレアに惚れ込んでいたらしい。 仕事のため、というよりも私情でプルプレアと関係を持っていたようだ、と言う者もいた。 ロセアが妊娠したことは、闇社会の者なら皆知っていた。 ロセアは、子を堕ろすという選択をしなかった。 そして生まれたのがグラウクスだった。 プルプレアは子供も一緒に、ロセアを殺そうとしていた。 ロセアはそれに気付いていた。 ロセアがグラウクスを仲間に託したその数時間後、闇社会中を駆け巡った話がある。 『プルプレアがあのスパイのロセアを殺したらしい』と。 そして、同時に『ロセアの腹にいたはずの子どもがいない』と囁かれたのだ。 この一連の話が、『ロセアの噂』として闇社会ではよく知られていた。 ロセアはそれほどまでに有名な人物だったのだ。 そしてロセアを殺した、ルテオラのボスのプルプレアもまた、ロセアに劣らないほど有名になった。 「この時に生まれた子供の行方は長い間分かっていなかったはずだ」 淡々と語るグラウクス。 死んだとも、まだ生きているとも色々流れていたのは知っている。 グラウクスも、自分がロセアの子だと気付くまで時間がかかった。 育ててくれたロセアの仲間はその話をしなかったし、グラウクス自身も聞かなかったからだ。 それでも、プルプレアがロセアを殺したという日が自分の誕生日だということに気付いた時、ロセアの仲間は話してくれたのだった。
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