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「シアネアがロセアの子だと名乗り出て、仕事を始めたのは何年前の話だったかな。かなり闇社会を変える出来事だったはずだ」
「そうだな。あの時は闇社会が丸々ひっくり返ってもおかしくなかった。プルプレアはロセアを殺して以来、ずっと闇社会の頂点に立ち続けていた。ロセアの子が生きているとなれば、それはプルプレアにとって痛手になる」
本来なら殺しておきたかった、自分の弱みになる存在がいる。
母親のロセアを殺した仇と言って、シアネアが攻めてきかねない。
プルプレアは怯えていたという。
「シアネアは、ロセアによく似ているからな。容姿もそうだが、能力もよく似ている」
「シアネアは器用だからな。私が使いこなせなかったもの全てを、上手く使ってここまで仕事をしてきている」
グラウクスは小さく笑った。
シアネアが表に出てきてから、存在を消された人格だったが、シアネアのことは尊敬しているらしい。
「だから、今日あんたらはそのシアネアを使ってプルプレアを抹消しようとした、ってことだな。シアネアの仇打ちという体で、闇社会の変革を謀った」
「そうだ」
「……シアネアは、ああ見えて臆病だ。スコープを覗いた瞬間、目標がプルプレアだと気付いて震えていた」
眉をひそめた男。
「何故だ?」
「分からないか? 会ったことがなかったとは言え、プルプレアはシアネアと、そして私の父親だ。たとえ母親のロセアを殺したのがこのプルプレアでも、肉親であることに変わりはなかった」
そこで、グラウクスは先ほど飛び下りた階段の方を見た。
あのときはまだ、シアネアが身体を支配していた。
「アルバ、と言ったか」
「そうだな」
階段の前で立っているアルバ。
「私は以前、アルバと会わなかったか? シアネアとしてではなく、グラウクスとして」
その言葉に、アルバは目を細めた。
「覚えていたのか。あの反応からすっかり忘れているものと思っていたが」
「シアネアは違和感で終わらせてしまったからな。アルバとの記憶を持っているのは私、グラウクスだからシアネアが知る訳ない」
ふっと笑ったアルバ。
その場にいた、十人の男たちに向かって手を上げた。
「やめだ。グラウクスに向かって攻撃はするな。いいか」
その言葉に、まだ手に持っていた銃をしまい始めた男たち。
「久しぶりだな、グラウクス。私の孫よ。娘のロセアによく似ている」
アルバは手を広げて、グラウクスに近づいていく。
「やはりそうか……あなたは、私の祖父だったのだな」
顔を綻ばせて、アルバに駆け寄るグラウクス。
そのまま、アルバに抱きついた。
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