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「どこで、私と会ったことがあると気付いた?」
「煙草を吸っていた時のあの動作だ。私はあれを知っていた」
シアネアにもグラウクスの動揺は伝わり、シアネアもアルバを気にするようになったのだ。
その結果がこうだ。
「そうか。確かにそうだな。ロセアが託した仲間の元に訪れた時、グラウクスとは何回か会っているからな。煙草か、吸うのをやめなくて良かったな」
「ボス、でも煙草は身体に悪いのでやめてください」
「いいじゃないか、煙草のおかげで孫が気付いてくれた」
「しかし」
グラウクスが蹴飛ばした男だ。
少し申し訳なさそうな顔をして、グラウクスはその男を見た。
「すまない、悪気はなかった。でも確証もなかったから蹴ってしまった」
「別にいいんですよ。あの、シアネアに蹴られたとなれば」
「あの時はもう、グラウクスだった。シアネアではない」
「そ、そう言われても」
くすくすと笑うグラウクス。
「私が二重人格だと言うつもりはない。シアネアに蹴られたと言った方がいいだろう。私はまた、シアネアに戻る」
そこで、アルバの顔を心配そうに見上げたグラウクス。
「シアネアにはアルバが祖父ということは伝えたのだが、シアネアがどんな反応をするかは分からない。それでもいいなら、私はここで生きるためにシアネアに戻る」
あくまでも、グラウクスは闇社会で仕事をしたことはない。
シアネアでないと、生きていけないのだ。
アルバはグラウクスの言葉に大きく頷く。
「大丈夫だ。安心して戻りなさい」
「なら」
アルバから離れて、手に持っていた帽子を被ったグラウクス。
髪は長いままだが、どこか空気が変わった。
「シアネア、か?」
アルバが刺激しないように尋ねる。
「グラウクスから話は聞いた。アルバは私の祖父だったのだな」
じっとアルバを見たシアネアは、薄く笑みを浮かべた。
「これから、よろしく頼む。グラウクス共々」
「あぁ。こちらこそよろしくな、シアネア」
グラウクスとは違い、シアネアは抱きついたりしない。
ただ、アルバとがっちりと握手しただけだった。
プルプレアがシアネアによって殺され、シアネアの祖父であるアルバが闇社会の頂点に立った。
アルバは組織同士の闘争をやめさせ、闇社会を消滅させるために動き、シアネアもその下で奔走することとなる。
母であるロセアとは少し異なり、シアネアとグラウクスという二つの人格を上手く使い分けるようになったシアネアが、様々な組織を混乱させて闇社会を変えていくのは、また別の話。
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