8人が本棚に入れています
本棚に追加
「――ただいま……あれ?」
ある日の、薄暮の頃。
玄関を開くも、返事はない。誰もいない……わけじゃないよね。二人とも、靴があるし。そして、帰って来たらいつもだいたいどちらかが迎えてくれるんだけど……いや、考え過ぎかな。もしかしたら、二人とも寝ちゃってて聴こえなかっただけかもしれないし。
だけど、リビングに入るなり違和感を覚える。キッチンに、切り掛けのままの食材がそのまま放置されていたから。料理はいつもサーシャか私が作ってるから、これは間違いなくサーシャだけど……彼が、こんなふうに途中で放置するなんてあり得ない。お手洗い……という可能性もなくはないかもしれないが、それも考えづらい。だって……それまで使用していたであろう包丁が、なんと床の上に転がっているから。こんなの、よほど体調が悪かったか、あるいは――
「――――っ!!」
――刹那、私は駆け出していた。確信はない……ないけど……それでも、ある予感が稲妻の如く全身を巡ったから。そして、二階奥の部屋――サーシャとドローテさんの部屋に到着し、ノックもなしにバッと扉を開く。すると――
「……あら、早かったわね――セリアちゃん?」
最初のコメントを投稿しよう!