お母さん

7/7
前へ
/24ページ
次へ
「――いやー、思ったより楽だったわ。まあ、あの調子だし病室側(むこう)も手を焼いてたんだろうね。大切な家族のお母さまなので、是非家で面倒を見させてくださいって頼んだら、すんなり引き渡してくれたわハハハッ」  すると、私の呟きに答えるように呵々とそんなことを告げるドローテさん。いや、答えたというかはただ言いたかっただけかな。  ともあれ……再度、母へと視線を移す。どうやら意識はないようで、サーシャみたく拘束されてるわけじゃない。拘束(そう)する際に目が覚め喚き散らされでもしたら、その方が面倒と考えたのかも。万が一、今の状態――拘束なしの状態で目が覚め暴れられても、今の弱りきった母なら押さえつけるのも容易いだろうし。……ただ、そんなことより―― 「……どうして、そんなことを……」  そう、か細い声で尋ねる。すると、待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑みを浮かべるドローテさん、そして―― 「――はぁ、なんで? そんなの、恨みがあるからに決まってるでしょ? あんなにも優しい私の両親(おや)を理不尽に殺した、あんたの父親(おや)にねえ」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加