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悪魔の選択
「…………」
そう、嗜虐の笑みを浮かべて告げる。だけど、その瞳には見紛いようもなく憎悪が宿っている。その綺麗な瞳に、底知れぬ憎悪が。そんな彼女をじっと見つめ、心の中で呟く。
……やっぱり、そうだったんだ。
正直、察してはいた。と言うのも、あの事件――父が犯した、あの殺人の被害者夫婦の生前の写真が当時の新聞に載っていたのだけど……ドローテさんは、何処かその二人の面影を宿しているように見受けられたから。
そして、それならサーシャに近づいた理由も腑に落ちる。尤も、サーシャは類稀なる美男子なので、それだけでも理由にはなるのだけど……ただ、彼女の場合は些か事情が違う。あの時点――私がドローテさんと始めて出会ったあの時点にて、サーシャにさほど好意を抱いてる様子が、彼女からはほとんど見受けられなかったから。
……ただ、それはそれとして――
「……それで、ご両親の仇を打つため、私を殺そうってことですか?」
そう、震えた声で尋ねる。……まあ、それならそれでも構わない。それで、彼女が満足するのなら――
「――はぁ、そんなわけないじゃん。それじゃ、味わわせてやれないし。私の受けた苦痛を」
すると、その瞳にありありと軽蔑を宿し答えるドローテさん。そして――
「――だからね、セリアちゃん。あんたには、選んでもらう。あんたの恋しい恋しいサーシャと、あんたの大事な大事なお母さん――いったい、どちらを助けるのか」
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