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お母さん
「――入るね、お母さん」
それから、一ヶ月ほど経て。
街一番の総合病院、その一室にて。
そう、扉越しに告げる。だけど、返事はない。それでも、構わず扉を開き足を踏み入れる。そんな私に続いて、二人――迷惑でなければ、一緒に来ると申し出てくれたサーシャとドローテさんが病室へと入っていく。すると、そこには――
「――うああぁ!! うああぁ!! うああああぁっ!!」
「お母さん!」
私を見るやいなや、狂ったように声を荒げる青白い顔の女性。私はすぐに近づいて、どうか落ち着いてと宥めるも、些かの効果もない。
……まあ、昨日今日に始まったことじゃないんだけどね、こんなの。あれ以来――父が例の事件で捕まって以来、母の精神はすっかり崩壊してしまって。
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