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ケイ君
しゃがんでボクを呼んでくれたお姉さんは犬の匂いがした。
ボクは、まっすぐお兄さんのところに行って立っているお兄さんの足に擦り寄ってみた。
「飼い猫みたいだね。ノラだったらこんなこと出来ないよな」
ボクは嬉しくて、お兄さんの足の間を擦り抜けたりして遊んだ。
やさしく頭を撫でてくれた。そしてお兄さんはボクを持ち上げようとボクの体に触って驚いて手をひっこめた。
「この子、ずっと何も食べてないよ。きっと」
お兄さんは車に乗ってどこかへ行った。
ボクは、お姉さんと遊びながら待っていた。
お兄さんは夜中でも明る過ぎるお店に行ってボクの食べられそうなご飯をたくさん買って来てくれた。
お姉さんは、お家からご飯を入れるお皿を持って来た。
「ほら、食べて」と美味しそうな匂いのご飯をボクの前に置いてくれた。
ボクは、お腹が空いて死にそうなくらいだったから夢中で食べた。
とっても美味しくてボクは久しぶりに、お腹がいっぱいになった。
「やっぱりお腹が空いてたんだな。この子どうしよう……」
「家には犬が居るから飼ってあげられない。ケイ君どうする?」
お兄さんは、お姉さんからケイ君と呼ばれていた。
どこかに電話をして「とにかく連れて行くから……」と電話を切った。
そしてボクは車に乗せられ、どこかに連れて行かれた。
ここは、どこなんだろう?
車から降ろされてケイ君に抱えられたボクは懐かしい草の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
おばあちゃんの庭の匂いとは少し違っていたけれど……。
ケイ君は、お家の中からボクが入れる大きさのダンボールと大きなタオルを持って来てボクのお家を作ってくれた。
タオルはフワフワでやさしい匂いがした。
「きょうから、ここがお前のお家だぞ」と頭を撫でられた。
ケイ君のお家の玄関の横がボクのお家になった。
ボクはとても疲れていて安心してその夜はグッスリ眠った。
空が、だんだん明るくなってきて朝が来た。
ボクは目が覚めて、ここがケイ君のお家だということを思い出した。
あったかいタオルの上でじっとしていたら玄関のドアが開いた。
ケイ君のお父さんが顔の長いボクより少し大きな犬を連れて出てきた。
お散歩に行くみたいだった。その犬はボクが珍しいみたいで
「君は誰? どこから来たの? いっしょに、お散歩に行かない?」
って言ってるみたいだった。
でもボクは犬は苦手。怖くて、その犬の顔を左手で押し退けようとした。
犬は不思議そうな顔をして、お父さんと散歩に行った。
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