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お腹いっぱいだガオー。生ハムうめえ。あんな量じゃ足りんぞ、おかわりをくれ。ホワイトタイガーは無事のようです。
「僕は何も知らないよ」
ハチワレのオセロは知らんぷり。
あれれ、オセロ君。目が泳ぎましたよ?
間違えて赤ワインをこぼしたどす黒い生ハム。オセロ君、なんかお酒臭いよ?
オセロ君が飛び乗ったせいでテーブルのグラスが倒れ、赤ワインの肉球の足跡が床とソファにまで…。
「犯人はオセロ。君は白黒じゃない、真っ黒よ。この小さな足跡と食べ散らかした生ハムが何よりの証拠」
「うぃー、生ハム上手いにゃー」
ワインで酔っ払ってる…大丈夫かな?
「お前より酒癖はマシだにゃ」
「いちいちうるさい!」
オセロ君は私をからかって笑ってる。あれ?なんで猫と喋れるの?猫が笑うの?
目が覚めると扇風機の羽の音がした。夢だったのか。懐かしいなとオセロの写真をSNSに上げてみる。
(お前こそ黒だにゃ!僕は顔出しNGってさんざん言っただろ?)
(だって可愛いんだもん。亡くなって数年経ったのに、かたいこと言わないの)
(化けて出るぞ、いいのかにゃ?)
(たまには出てきたら?寂しいよ)
(猫缶くれたら考えてやる)
(黒い缶の値段が高いやつ?)
(そうそう、猫缶はあれに限る)
扇風機を止めて窓を開ける。足元にひとつまみほどの白と黒の毛玉が転がっていた。オセロが来てたんだ。嬉しすぎてまだオセロがいないか家中を探しに走り回る。
「おはよう、うるさいけど何?」
寝ぼけ眼の夫にオセロの白黒の毛玉を見せると、夫は私よりうるさい。
「うそだろ!?オセロの毛じゃん!」
二人でオセロがまだどこかにいないか狭いアパートの部屋を大捜索。もうどこにもいなかったけど、オセロはちゃんと帰ってきた。どうやら自分の月命日を覚えている賢い猫のようだ。6月上旬の蒸し暑い日。ハチワレ猫の薄い影がベランダからこっそり私と夫を見ていた。舞い上がるように駆け上がるように、気まぐれに現れたオセロはまた天に帰っていった。
(了)
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