第一話 噂の「かっこいい」先生

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<かっこいい先生> 入学して数日経った、ある日の昼休み。 私と有紗は中庭のベンチに向かっていた。 入学式の翌日に有紗と見つけた快適そうな場所。 中庭って先輩の居場所になっているのかな…? なんて思っていたが、意外とそんなことは無かった。 昼休みの中庭は予想に反してひっそりとしていた。 この学校は学食やフリースペースがあるから中庭には出てこないのかもしれない。 「あ、あれ」 「ん?」 中庭へ向かう廊下の途中、有紗が遠くを指さして声を出した。 「真帆、あれが伊東先生だよ」 有紗の視線の先には、女子生徒に囲まれた男性教師いた。 黒色の短髪で緩いパーマがかかっている。そして灰色のカッターシャツ。ビシッと締めたネクタイは、まさかの黒色ヒョウ柄。全体的に黒い、あれが伊東先生か。 「本当にかっこいい…」 「あれ? まさか、伊東先生狙う??」 「はぁ!? 有紗ったら私を何だと思っているの。外見だけで人を好きになるほど単純じゃ無いよ」 かっこいいけど、パッと見た感じ軽そう。 伊東先生に纏わりついている女子生徒も、スカート短くして髪も結んでなくてチャラチャラした感じ。ラクダ色のカーディガンを着ているし。 それ校則違反じゃなかったっけ? 全てにおいて、私とは無縁の世界。 少なくともこの1年間は関わらないだろうな。 「…ていうか有紗。何で伊東先生知っているの」 「あぁ。空手部の先輩が教えてくれたんだぁ。伊東先生、部活の顧問はしてないけど実は極真空手の有段者らしいよ」 空手の有段者? あの見た目で…? いや、人は見かけによらないとは言うけど。ギャップが凄いな。 「なんというか…かっこいいね」 「ははは! 真帆の顔、真っ赤!」 顔が真っ赤? そんな冗談。 別に、一目惚れとかしていないんだからね。 とか言いつつ。 その後も廊下や職員室で伊東先生を見かける度、ほんの少しだけ…心臓がドキドキした。
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