第三話 2人の数学教師

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9月も終わりに近付いてきたが、昼休みの中庭はまだまだ暑い。 翌日、いつものように有紗と中庭に来ていた。 みんな冷房の効いた教室に(こも)っているのか、外は静まり返っている。 「え? ちょっと待って、数学補習同好会?? 嘘でしょ??」   中庭に有紗の陽気な声が響いた。 私の話を聞いた有紗は、お腹を押さえながら大爆笑している。 「む、無理すぎ!!!! 真帆1人に顧問が早川先生と伊東先生? 急展開すぎるでしょ!!!」 「やばいでしょ、しかも私の意志がガン無視よ」 「家帰ってゴロゴロするって言っていたのにね!!」 「数学に殺されそうな勢いよ!」 有紗は止まらない笑いを抑えながら、目にたまった涙を拭う。 「いや~しかしあれだね、同好会を作ってまで伊東先生も補習に関わりたいんだね。もうさ、真帆のこと気になるっていうのを通り越して絶対好きじゃん!」 「う、うーん…」 関わりたいというのは……多分そういうこと、なんだと思う。 そう、思いたくないけど。 しかし伊東も矛盾しているよね…。 この前、自身のファンクラブに対して「勝手に作りやがって」とか言っていたけど。 これそのままブーメランじゃない。 私も今その感情だよ。数学補習同好会なんて勝手に作りやがって。 今度会ったら絶対に物申さないと。 「あ、でね…有紗。数学補習同好会もなかなかなんだけど…」 早川先生のことも話そうと思い、小声で切り出す。 「え、他にもまだあるの?」 「……早川先生にね、僕は貴女のことが好きですって言われた」 「………え、え?」 有紗は反射的に立ち上がった。その勢いで膝の上に置いていたパンが宙に舞う。 「うぉっ」 宙に舞った有紗のパンを咄嗟(とっさ)にキャッチした。我ながらナイス! 有紗はジャンプしながら私を見る。 「こら~真帆! 私のパンのことはいいの!! ていうか! どういう経緯でそんなことになるのよ!」 感情を抑えきれないのか、有紗はずっとピョンピョンとその場でジャンプをしている。 「いや経緯も何もなく、本当に唐突だったの。ただ、その話になる前に伊東と早川先生は数学補習同好会について話し合い…というか言い合いしていたかな。敵同士楽しく反発し合いながら…とか。2人凄い仲が悪そうな感じで…」 落ち着きを取り戻した有紗はベンチに座った。 そして少し考えて口を開く。 「ほ~ん、そりゃ2人とも真帆のこと好きなら反発もするよね」 「え?」 「いや分かったよ。今までの真帆の話を聞いた限りだけど、伊東先生の気になるっているのも早川先生の貴女が好きっていうもの真帆のことを女性として好きで間違いないと思う。そして更に…、2人ともお互い同じ人が好きっていうことに気付いているよ」 「えぇ、そんな馬鹿な…」 そう言ってふと気づいた。 敵同士楽しく反発し合いながら、って…そういうこと!? 「修羅場だね」 ニコニコして楽しそうな有紗を横目に空を見上げた。 まだ有紗の考察(こうさつ)の域でしかないけど、本当にそうだったらどうしよう…。 数学補習同好会の先行きは不安でいっぱいだ。    
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