第二話 真帆と数学

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<期末> 7月。それはもう暑いこと。 制服も夏服になった。正直、この夏服が可愛くてこの学校を選んだ。冬服はセーラー服で、夏服はブラウスにリボン、そしてベスト。学校カラーのえんじ色のリボンが白いブラウスに良く映える。 「きゃー! 伊東ちゃん!!」 「ちゃん。じゃねぇよ。先生な」 教室移動中、渡り廊下で伊東先生と3年生の先輩が話していた。…というか、囲まれている? 「伊東先生は本当に人気だね…」 有紗と遠目に見る。先輩方、その人凄く性格悪いですよ。 それとも先輩方はそれも承知の上なのかな。だとしたら大分変わり者だけれども…。 「あ、藤原!」 「えっ!?」 見過ぎたかもしれない。伊東先生がこちらに気付いてしまった。 「せんせ。突然どうしたの? 藤原って誰〜?」 「…真帆、走ろう」 「うん」 私と有紗は走ってその場から逃げた。 「あ。ちょっと!」 久しぶりに走った…。息切れが凄い。 その点有紗は何とも無さそう。さすが空手部。 「気付かれるとは思わなかった…」 「先輩怖いよね。目を付けられたら大変」 特に、伊東先生を取り囲んでいる人たちはより一層怖そう。 「しかし、伊東先生覚えているね。真帆のこと!一度会っただけなのに!」 「それは多分、赤点で印象が強かったからじゃない?」 初対面のインパクトとしては100点満点だったかもしれない。 しかし、”伊東ちゃん”って。先輩に向かって失礼だが、阿呆らしい。 「何の用だったのかね?」 「さぁ。またからかうだけじゃないかな?」 知らないけど。 そもそも私、伊東先生のことは何も知らないけど。
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