見えない明日が来るならば

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 ***  久しぶりの晴れが嬉しいのはみんな同じなのだろう。  朝学校に行くと、既にグラウンドでは何人もの子供たちが遊んでいた。水たまりも多いのだが――中には、水たまりの中にダイブして泥だらけになっている生徒もいる。後で確実に先生や親に叱られると思うのだが、大丈夫なのかどうか。 「エリー、おっはよ!」 「おはよう!」 「おはようエリー!」 「おはおはおはー」 「もーにん!」 「みんなおはよー!」  教室に行くと、いつもより軽やかな声がたくさん聞こえてきた。歓迎してくれた友人たちとハイタッチしていると、一番仲良しのルナが“ねえねえねえねえ”と声をかけてきた。 「グラウンド見た?男子の馬鹿どもがさー、泥遊びしまくってんのよ。今日体育あるのに、あんなに体操着汚しちゃってどうするつもりなのかしら。洗って落ちるのかなアレ」 「確実に親の雷は落ちるよね」 「ねー。でもって体育の時間泥んこの服で出ようとして叱られて、先生に反省文書かされるところまで見えたわ」 「あるあるあるある。下手すれば、大好きな体育の時間が出来んになって泣くやつ」 「ねー」  二人でくすくすと笑い合う。男子小学生の馬鹿っぷりは見ていて面白いっちゃ面白い。まあ、泥遊びしている中に一部女子も混じっているのは確かだけれど。 「明日の明け方あたりからまた雨だって天気予報で言ってたみたいだね」  はあ、と私はため息をついた。このまま晴れていてほしい、という気持ちはルナも同じだろ。まったくね、と腕組みをして頷いた。 「最近女神様ったら、雨降らせすぎよ。はー、あたし達も天気を変える魔法が使えたらなー。魔法使いなんだから、それくらいできるようになってもいい気がするのに。やっぱり人間の魔力じゃ足らないのかしらね」 「しょうがないよ、それは昔ながらの禁忌なんだし」 「わかってるけどー」  ふんす、と鼻を鳴らすルナ。 「来週、親戚と一緒にバーベキューパーティの予定があったのよ。このままじゃ予定がトンじゃうわ」  本来なら、そろそろ雨期が終わっているはずの夏。夏休みも近づいてきているし、予定をいれている人も多いのだろう。ルナもその口だったらしい。  お互い、遊びに行く日や予定がある日は晴れていてほしいものだ。他のみんなもそう思っていることだろう。 ――雨は、夜中だけにしてほしいなあ。  夜中も仕事をしている人はいる。わかってはいたが、子供としてはそう願わず人はいられないのだった。  その日。泥んこ遊びしていた男子+一部女子はやっぱり先生からお説教を喰らい、反省文を書かされていた。エリーやルナはそれを見て笑いつつ、放課後は他の子達と一緒にドッジボールを楽しんだのだった。  雨上がり、爽やかな夕方。笑って手を振り、ルナたちと別れて帰宅する。  夕食の席でつけたニュースでやっていた天気予報の内容は、相変わらず変わっていなかった。 『サウスランド地方およびウェスティア地方全域で、深夜から未明にかけて再び雨が降り出すことでしょう。線状降水帯が発生する可能性も高く、大雨洪水警報が出ることも予測されます。一部地域の方は、土砂災害にも十分お気をつけください……』
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