見えない明日が来るならば

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「残念ながら、晴れるのは今日までみたい。明日の明け方からまた雨ですって。いくら雨期だからって、こうも長く続くと疲れちゃうわよね」 「ええ、また雨かあ。せっかく上がったのに。……来月の旅行、大丈夫かな。雨期が終わってればいいけど」 「それより俺は林間学校が心配で仕方ねえ。旅行の前の週だからほぼ確実に梅雨明けしてない。いつもならとっくに終わってるはずだってのなー」 「ああ、それは御気の毒……」  やっぱり、おかしい。 「晴れにする魔法があればいいのに」  思わず呟いたエリーに、お父さんが苦笑いした。 「残念ながら、人間にそりゃ無理だよ。私達がいくら魔法使いでもな。……それができるのは、女神様だけさ」  笑顔で喋りながらも、エリーはまるで、自分が誰かに“既定路線の台詞”を喋らさせられているような違和感を覚えていた。  何かが、変だ。  でも何が変なのかがよくわからない。もやもやしたものを抱えながら食事を食べて、学校へ行く。きっとグラウンドでは、泥遊びをしている子供たちがいるのだろう。そして彼等は、体操着を朝から泥まみれにして先生に派手に叱られるのだろう。 「最近女神様ったら、雨降らせすぎよ。はー、あたし達も天気を変える魔法が使えたらなー。魔法使いなんだから、それくらいできるようになってもいい気がするのに。やっぱり人間の魔力じゃ足らないのかしらね」 「しょうがないよ、それは昔ながらの禁忌なんだし」 「わかってるけどー」  教室で、どこかで聞いた会話がもう一度繰り返されていた。 「来週、親戚と一緒にバーベキューパーティの予定があったのよ。このままじゃ予定がトンじゃうわ」  ルナは、何も変だと思っていないのだろうか。それともエリーだけが、背中が冷たくなるような感覚を覚えているのだろうか。  正体が、わからない。確かなことはその日もまた、雨上がりの青空の下でドッジボールをしたこと。  そして天気予報で、聞き覚えのある文章がそのまま読まれたことだ。 『サウスランド地方およびウェスティア地方全域で、深夜から未明にかけて再び雨が降り出すことでしょう。線状降水帯が発生する可能性も高く、大雨洪水警報が出ることも予測されます。一部地域の方は、土砂災害にも十分お気をつけください……』
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