第五話 「教師と生徒」以上のこと

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「……」 静寂が訪れた。 「…真帆さん」 「…はい」 早川先生は後ろから正面に回り、私と向き合う。 そして、勢いよく唇を重ねて来た。 何度も、何度もくっつけては離す。 何度も繰り返し、そのうち舌を絡める。 激しいキスに足の力が抜け、床に座り込んだ。 それでも先生は、優しく体を支えてくれながらキスを繰り返す。 「先生…激しい…」 「……」 それでも無言で繰り返した。 ふと唇に感じるしょっぱさに閉じていた目を開けてみる。 先生は…泣いていた。 「先生…」 「だから、だから…不安だと言ったでしょう」 「でも、私にはどうしようもできません。その感情に答えないことしか、できることはありません」 「………知っています。知っていますとも。…ごめんなさい。最初から分かっています。真帆さんを攻めて拗ねてもどうしようもないこと…」 大粒の涙が止まらない。 ハンカチを取り出し、先生の眼鏡をそっと取る。 そして、目からポロポロと零れる涙を優しく拭った。 本当に…どうしようもできない。 浅野先生と神崎くんから物理的に離れるしかない。 けれどそれは、この学校を去るしか…解決策は無い。 「本当僕は、最初から貴女を困らせてばかりです」 「…全くです」 自覚があるなら直してくれないかな。 私は先生の眼鏡を机に置いて、強く先生を抱き締める。 強く、強く…私が出せる力を振り絞って…。 「……痛いです」 「痛くしていますから」 今度は先生の首筋に唇を当てる。 痕が付かない程度に吸い、その首に歯を立て、軽く噛み付く。 「……真帆さん。どこで覚えたのですか」 「………」 無言を貫き、先生の首元に手を移す。 ビシッと締められているネクタイに手を掛け、そっと解いてみた。 こうやって結んでいるのか…。 仕組みが分かればこちらのもの。 スルッと解くことができた。 「何をしているのですか…」 眼鏡が無いと何も見えない先生。 そんな先生の唇を塞いだ。 何度も角度を変えながら唇を重ねてみる。 それと同時に、カッターシャツのボタンにも手を掛けた。 ボタンをゆっくりと外していく。 「真帆さん…何を考えているか分かりませんが、学校ですよ…」 「それ、いつもの私のセリフです」 ………正直、ドキドキしていた。 手が大きく震えてどうしようもない。 有紗から借りた恋愛漫画で得た知識のみでの行動。 心臓が口から出てきそうなくらい、心拍数が上がっていた。 「真帆さん」 「……」 「真帆さん、眼鏡を返して下さい」 「……」 「真帆さん」 「…はい」 そっと眼鏡を掛けてあげる。 先生は少しズレていた眼鏡の位置を戻し、そのまま私を床に押し倒した。 「…先生、学校です」 「どの口が言っているのですか」 そう言って覆いかぶさってきて、深いキスをした。 「待って、私が裕哉さんを襲いたいの」 「意味が分かりません」 「私がどれだけ本気か、他の人に興味が無いかを分かってもらおうと思いまして」 「…そうですか」 それでも先生は覆いかぶさったまま降りる気配はない。 何度もキスを繰り返し、私の制服に手を掛ける。 そこから私たちの間に会話は無くなり、只々本能のまま激しくお互いを求めあった。
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