第三話 特別な日

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活動が始まって1時間が経過した。 私は、問題を解く速度が格段に上がっていた。 「藤原さん、家でどれだけ勉強しているのですか」 「最近は2時間くらいですかね。他の科目も予習をしているので、大体そのくらい」 「凄いですよ…」 ただ、正解率は低い。 10問解いて3問正解していれば良い方だが、1年の頃と比べたら大きな成長だ。 「真帆、遂に赤点回避? 真帆の取り柄が無くなっちゃうよ~」 「大丈夫ですよ的場さん。まだ赤点回避の域に達しておりません」 「あ、本当? 何だか安心したぁ!」 「2人とも何よそれ!!!」 早川先生も有紗も失礼だなぁ…。 こんなにも頑張っているのに。 やる気の無かった頃は良いよ? 何を言われても。 けれど今は勉強を頑張っているから…少しモヤモヤする。 「藤原さんが数学出来るようになったら担任の僕も誇らしいよ。成績見たけど、数学以外は90点以上で通知表も5だったね! 前任校でもそんな生徒見たことないから本当凄い!!」 浅野先生はそう言いながら私の方に近付いてきて、肩をポンポンと叩いた。 その様子を見た有紗の顔が少し焦る。 「あ、浅野先生。そういえば私時間かも! 先生も軽音部行かないと!」 「そうだった、忘れるところだった!!」 有紗は慌てたような様子で荷物を鞄に詰めた。 「ほら、先生一緒に下に降りようよ! ね、ほらほら!」 「あ、うん分かった。じゃあ藤原さんまたね! 早川先生、また軽音部終わったら戻ります!」 「真帆と早川先生、じゃあね!」 有紗は浅野先生の背中を押しながら数学科準備室から出て行った。 「…………」 私はゆっくりと早川先生の方を向く。 その顔からは感情が読み取れなかった。 「先生?」 固く口を閉ざしている先生は、私の肩に手を乗せて何かを払うような動作をする。 「少し、隙があります」 「え?」 「簡単に触られすぎです」 「……」 そう言う先生は少し口を尖らせていた。 「隙って言いますけど…そもそも、思い出してください。先生だってあれだけ私に触れていたではありませんか」 「……」 無言で肩を払い続ける先生。 暫く黙り続けたのち、小さく口を開いて微笑んだ。 「そうでしたね」 浅野先生に嫉妬しているのだろうなぁ。 早川先生は何も言わないけれど、手に取るように分かる。 結局その後、先生は活動を再開させることなく終わらせた。
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