第四話 先送りしていた事案

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<その後> 「真帆…本当に学校に来られて良かったぁ…」 「有紗、色々ありがとうね」 月曜日、普通に歩けるくらいまで回復した私はいつも通り学校に来た。 「お礼はいらないよ。私、先生に真帆のこと頼まれているから。私のこと先生だと思って!」 「…それは無理があるよ。有紗は有紗だし」 「まぁそもそも、別に頼まれなくても真帆のそばから離れないけどね!!」 教室に入ると、私の顔を見た数人が駆け寄ってきた。 神崎くんと取り巻き4人は…いない。 クラスの人たちと会話をしていると、教壇でラクダ色カーディガンの集団に囲まれていた浅野先生が飛んできた。 「藤原さん…おはよう。心配したよ、大丈夫?」 「あ、はい。大丈夫です」 「えっと、聞きたいことあるからちょっと来て」 「え?」 もうすぐ始業のチャイム鳴るけど…。 「浅野先生、私目撃者だから一緒に話すよ」 「いや、取り敢えず藤原さんから聞くだけだから。今はいいよ。また的場さんにも聞くかも」 そう言って教室から連れ出された。 「藤原さん、ちょっとこっち!」 そう言われ、連れてこられたのは教室棟にある面談室。 私が入ると先生は扉を閉めた。 「藤原さん…早川先生から聞いたよ。クラスの子から暴力振るわれたって。その顔の湿布も暴力が原因?」 怪我の痛みはかなり良くなった。 ただ、顔も痣で紫になっているから…それを隠すために貼っている。というのもある。 浅野先生は私に目線を合わせて、両手で私の肩を持った。 早川先生が見たら火を噴きそう。 そんな光景。 「そうです。顔も体も痣だらけです。激しくやられました」 「何でまた…。どうしてこうなったの」 「………」 浅野先生は詳しいことを知らないのかな。 早川先生が意図的に言わなかったのか、それともまだどう処分するかを考えているのか。 私には分からない。 早川先生が何かを考えているかもしれないから。 余計なことを言わないようにしようと決めた。 「…私、自分の口から言いたくないです。思い出すだけで苦しいです」 思ってもいないことを平然と言う自分に少し恐怖感を覚える。 しかし、浅野先生を誤魔化すには十分。 「あ…いや、そうだよね。…ごめん、詳しいことは早川先生から聞くから…。というかさ、何で早川先生に助けを求めたの?」 「…数学補習同好会の活動前だったからでしょう。早川先生を呼んだのは私自身ではなく、的場さんなので詳しいことは分かりませんが」 「あ、そうか。…そうよね。…いや、何で担任の僕じゃなかったのかなって思って。…ごめんね」 「…いえ」 問題が起こった時に担任を呼ぶというルールはないはず。 この人は何を気にしているのだろうか。 浅野先生は鼻から息を吐きだし、小さく唇を噛む。 先生は何か言葉を継ごうとしていたが、始業のチャイムが鳴り響きだした。 「あ、ヤバ! 藤原さん教室戻るよ。ごめんね、話してくれてありがとう」 「…はい」 教室に戻る際、3組の前を通る。 ショートホームルームを開始していた早川先生は、廊下を歩く私と浅野先生の姿を見て目を見開いていた。
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