第六話  非日常がもたらすもの

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その日の夜。 早川先生から引くほど着信が入った。 「………」 また、鳴り出すスマホ。 7回目の着信。 流石に可哀想になってきた。 「…はい」 『あ、やっと出ましたね』 いつもより声のトーンが低い早川先生。 低く囁くような声に鳥肌が立つ。 『…何で話せないのですか。何があったのですか』 「………」 『真帆さんが浅野先生に指名されて文化祭実行委員になったこと。神崎くんも一緒なこと。的場さんから聞きました。それが関係していますか』 「……それもそうですが、今回の件について関係しておりません」 『では、何でしょうか』 「……」 言えない。というか、言いたくない。 『真帆さん…お願いします。話して下さい』 「……」 『真帆さん…』 話すまで諦めてくれなさそう。 「……」 私は話す決意をした。 「………先生のクラスの、津田さん。3組の文化祭実行委員の人。数学補習同好会に入りたいらしいですよ」 そう言うと先生は少し黙った後、小さく溜息をついた。 『…実は担任になってから、何度か入部したいと言われたことがありました。勿論お断りをしていたのですが…』 「……自己紹介の時、私が数学補習同好会って言ったら凄く反応しちゃって。私、津田さんのこと何も知らないから、何でそんなに反応したのか凄く不思議だったんですけど…………」 そこまで言って、言葉を継げなくなった。 胸が締め付けられて苦しい。 『………』 お互い無言の時間が続く。 そして、少し経って先生が口を開いた。 『真帆さん、今から会いましょう』 「…え?」 『今すぐ向かいます』 「え?」 先生はそう言い残して一方的に電話を切った。
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