第六話  非日常がもたらすもの

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<不穏> 「私、文化祭のメイン企画を考えてきたんだけど。先生たちによるコスプレショーみたいなの、どうかな? 盛り上がると思わない?」 放課後の文化祭実行委員会。 係ごとに分かれて打ち合わせの時間に、津田さんはそう言い出した。 「それ盛り上がるか? 普通に生徒から出場者を募集してファッションショーした方が良くね?」 「神崎くんには分からないかもしれないけど。普段とは違う先生の様子を見たら生徒は興奮するものよ」 「それは生徒同士でも同じだと思うけど」 「うちは神崎くんの意見に賛成」 3人による積極的な意見の言い合い。 私は黙って傍観をしていた。 「近藤さん。例えばだけど、担任の普段とは違う姿とか見られたらどう思う?」 「…どうって…早川先生の違う姿? ……いや、興味無いね」 「例えばだけど、いつもの七三分けをしていない姿とか…どう?」 「…興味無いけど。何なの、津田さんは早川先生のことが気になるわけ?」 「そ、そういうわけじゃないけど。面白そうじゃん…?」 「分からんわ」 ……………。 これ、あれだ。 津田さんには下心がある。 イベントに乗じて、早川先生の違う姿を見ようとしているのだと思う。 何なら関われたらいいなくらいまで思っているのだと、思う。 「藤原さん、顔」 「……」 神崎くんが耳元で囁く。 いけない…感情が顔に出ちゃう。 「ねぇ、藤原さんはどう思う?」 「…私は、神崎くんの意見に賛成。生徒のファッションショーで良いんじゃない?」 「じゃあそうしようよ。多数決で、決定!」 神崎くんと近藤さんが大きく拍手をする。 「………」 津田さんは睨むように私を見ていた。 …私を睨んでも…どうしようもないのに。 「うちが企画書まとめて浅野先生に提出しておくよ!」 「うん、よろしく」
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