第八話 誰の目にも触れさせたくなくて

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買い物を終え、有紗はそのまま空手道場に行くということで、その場で解散した。 時刻はもうすぐ19時になるところ。 先生、暇かな。 忙しかったらどうしようとか色々考えたけれど。 …私、彼女だし。 電話するくらい、大丈夫よね。 そう考え、思い切って電話を掛けた。 すると、ワンコールも鳴らないうちに電話は繋がった。 「え、はやっ!」 『こんばんは。早くてすみません』 「いや、良いんですけどね。全然」 『実は僕も電話を掛けようか悩んで、スマホの画面と睨めっこをしていたところです』 「あ、誰かに掛ける予定でしたか。すみません、先そちらどうぞ」 『…………貴女にですよ。真帆さん』 電話越しに小さな溜息が聞こえてきて、その後先生はふふっと笑った。 『以心伝心です』 「そういうことにしておきましょう」 『物は言いようですからね』 「はい」 面白くてにやけが止まらない。 先生の声を聞くだけでも気持ちが昂る。 『ところで、ご用件は何でしょうか』 「…その…もし暇なら、今から会えないかと思いまして」 そう答えると、先生は黙り込んだ。 …何か、考えている? 「あ、いや…。暇ならです。無理にとは言いません」 弁解すると、先生は吹き出すように笑った。 『いいえ、全然無理ではありません。ただ、真帆さんからお誘いがかかるのは初めてなので。びっくりしてしまいました』 …そうだっけ? 初めて? いつも先生からのお誘いだったか…。 『実は僕も同じ用件でした。決まりです、お会いしましょう。今、どちらですか?』 「先生の家の近くのショッピングセンターです」 『かなり近いですね』 「はい。歩いてそちらに行っても良いですか?」 『良いですよ。では、お待ちしております』 先生の優しい声に心が弾んだ。 電話を切り、ここから徒歩5分も掛からないくらいの距離を歩いて移動した。
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