第八話 誰の目にも触れさせたくなくて

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<交錯> 修学旅行当日がやってきた。 学校に集合し、クラスごとにバスに乗り込んで出発する。 「真帆、楽しみだね!」 「……いや、全然」 「神崎のことは気にしちゃダメだよ。折角だから楽しまないと」 「うーん……」 3組のバス付近に立っている早川先生。 あちらも何やら表情が険しそう。 そして、その早川先生から数歩離れた所に立っている津田さん。 タイミングを図っているのが見え見えだよ…。 「ところで、真帆。首元どうしたの?」 「………え」 「絆創膏貼っているところ。怪我?」 「…う、うん。虫に刺されたところから血が出ちゃって」 「今の時期に虫いるっけ?」 「いるいる。蚊…とは違う何か」 「そうだっけ?」 ニヤニヤしている有紗。 この人は…本当に…。 虫じゃないこと、絶対に分かっているでしょ!!!!! この前先生の家に行った時。 その行為の最中、先生は私の身体のあちこちに、何度も何度もキスマークを付けた。 「…裕哉さん、首元は駄目ですよ…。制服から見えます」 なんて言うと 「男避けですから」 と、大人げないことを言っていた。 仕返しに私も先生の首元にキスマークを付けてみた。 結構綺麗に付けることができたのだけど…。 しかし、今見た感じ。 丁度良くカッターシャツの襟に隠れているではありませんか!! …失敗だ。 位置がもう少し上だったら良かった。 「ねぇ、真帆。やっぱり先生とそういうことをしてるんだね」 「……」 ニヤニヤしながら耳元で囁くようにそう言う有紗。 …ほら、良く分かっている。 「……………男避けだって」 「え、男避け?」 「修学旅行中の、男避け」 そう言うと有紗は吹き出して、その場にうずくまった。 大笑いしたい気持ちを抑えて控えめに笑っている。 「はぁ~…真帆、愛されているね」 「…うん、それは間違いない」 「でも、制服から見えるのは駄目だよ。独占欲が強過ぎる」 「うん。だけど私もその気持ちは分かるんだ。私も同じように付けたんだけど、襟の部分で隠れているのが残念でね。もう少し上にすれば良かったって思っている」 「は!?」 有紗はまた吹き出して、その場にうずくまった。 「真帆……無理、無理すぎ…!! 洗脳されているね…」 「いや、洗脳じゃないよ。津田さんの動きが怖いから。見える場所に印を付けておきたいと思っただけ」 …と言いながら思う。 私もかなりヤバい人だ。
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