第八話 誰の目にも触れさせたくなくて

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<跡> 3日間お世話になるホテル併設のスキー場に着いた。 辺りは一面真っ白で、雪がひらひらと舞い降りている。 「寒い…」 「身が縮こまるね」 有紗と2人、震えながら建物の中に入る。 そこにはスキーウェアや装備などが沢山置いてあり、スキーをやらざるを得ないこと実感する。 スキーはやったことが無い。 怖そうなイメージがあるから、できればやりたくないなぁなんて思う。 今日は着いた初日と言うことで、オリエンテーションや諸々の説明だけで終わった。 実際に滑るのは明日かららしい。 夜は大広間でクラスごとに食事を取り温泉で入浴。 点呼時間に部屋にいることさえ守れば、ホテル内は自由とのことだ。 「真帆、温泉いつ行く?」 「…うーん、そうね。有紗には悪いんだけど……」 ホテルの一室。 有紗と同室の私は、部屋で荷解きをしていた。 「あのね〜…。有紗…その……」 「なによー! 伝わらないよー!!」 無言で制服を捲り、有紗にお腹を見せる。 …そう。 ちょっと温泉は…と思う理由。 先生に付けられたキスマークの量が凄いから。 「…………わぁ……………」 有紗は一瞬で顔を赤くし、両手で頬を覆った。 お腹の他にも背中や足にも付いている。 「これだから、私は部屋で済まそうかなって思って…」 「いや…これは凄いわ。………しかし、あの眼鏡〜!!! 折角の修学旅行で温泉に入るってこと分かっているだろうに!! ここまでするかよ!?」 「しかも先生ね、これした後に、僕のことは忘れて高校生として楽しんで下さいって言ったからね」 「はーん!!! 頭おかしいかよ!!! 矛盾し過ぎだわ!!!」 早川先生の独占欲が凄いことには気付いていたけれど、その欲の大きさは私が思っていた以上なのかもしれない。 でもまぁ別に、お風呂にさえ入れれば良いから。 温泉に行かなくても良いんだけれどね。 「あの眼鏡…真面目そうな見た目して、やることはえげつないな」 「ヤバいよね〜私もびっくりしちゃって。ということで有紗。申し訳無いけれど、温泉には1人で行ってきてもらえるかな?」 「あ〜寂しいけど分かった!!! 途中で変態眼鏡を見つけたらボコボコにしとくね!!!!」 「それはやめて…」 有紗が部屋を出て行き、1人になった。 鏡の前に立ち、改めて自分の体を見る。 付けられたキスマークの殆どが青紫色になっていた。 「…………」 本当は、嬉しいんだ 先生と生徒の恋愛という、秘密の関係。 遠目に見えるあの先生が私の彼氏で。 その先生が私に付けた跡が身体中にあって。 実は私も、先生の首元以外の場所にも跡を付けていて。 優越感とはまた違う。 何とも言えない感情で胸がいっぱいなんだ。 だから別に、温泉に入れないことに関しては何も思わない。 ただ……そんなこと、有紗には口が裂けても言えないけどね。
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