第八話 誰の目にも触れさせたくなくて

14/17
前へ
/94ページ
次へ
私と有紗は東京駅を離れ、墨田区に向かう。 一度は見てみたいと思っていた東京スカイツリーを見に行くことにした。スカイツリーを見た後は、東京ソラマチでの散策だ。 「本音はさ、東京タワーも見たい」 「分かる…大体私たち、東京来るのは初めてだからね!」 「ねー、色んなところを見たいのに時間が足りない…」 「…あ。真帆! 卒業旅行とかでさ、また東京来ようよ! 絶対楽しいと思わない!?」 「それ良い! そうしよう!!」 まだ観光施設を1つも見ていないのに、次の旅行の話をする私たち。 あまりにも気が早すぎて我ながら面白い。 私たちはスマホのマップだけを頼りに歩き続ける。 スカイツリーが少しずつ近くに見えてきた。 「大きいね、真帆」 「本当。近くで見るとこんなにも大きいんだ」 地元では感じることのできない都会の空気に心拍数が上がる。 立ち並ぶ高層ビルやマンションも圧巻だ。 歩いている道沿いにも沢山のお洒落なお店があり、何も考えず歩いているだけでも楽しい。 「真帆、見えたよ」 有紗が指さした先に、スカイツリーの入り口が見えた。 パッと見た感じ、私たちと同じ制服を着た人も結構いるようだ。 「自由とは言え、やっぱりみんな似たようなところに集まってくるよね」 「まぁ、田舎者の私たちには有名な場所しか分からないし」 「それよね」 同じ制服を着た人たちの中に、同じクラスの子を見つけた。 近付くと向こうも私たちに気付き、声を上げた。 「あ、有紗ちゃんと真帆ちゃん」 「やっほー! 今からスカイツリー登るの?」 「そうそう! なんかね、凄く長いエレベーターで上に行くんだって。約50秒とか!! そんな経験、出来ないと思わない!?」 「………エレベーター…50秒?」 クラスの子のその言葉に、有紗が怪訝そうな顔をした。 「有紗?」 「……真帆、ごめん」 「え?」 「エレベーター50秒は、酔う自信しかない!!!!!!」 「え!?」 私もクラスの子もみんなが驚いた顔をした。 いや、有紗…何言っているの!? 「エレベーター…酔うのかな?」 「私、3階建てのショッピングモールのエレベーターも結構ギリギリ」 「えぇー…そんなに乗り物酔い酷かったっけ?」 「年をかさねるごとに悪化しているの。ごめん。ここは、無理だ!!!」 ここまで来て無理なの!!?? しかも年って、まだ高校2年生17歳でしょうが!!!! …なんてツッコミは心の中で留めて…。 「分かった。じゃあ、ソラマチ行こうよ」 渋々、諦めた。 「本当にごめんね、真帆~!!!!」 半泣きの有紗はその場で土下座をした。 恥ずかしいから速攻立たせ、クラスの子に写真を撮って来てもらうようお願いした。 「全く。有紗…公共の場で土下座なんてしないの!」 「でも、そうしないと心苦しくて…」 「もういいよ。酔われて後々大変なことになっても困るし。自己管理は大切なことだよ」 「真帆〜………!!! 好き、大好き!!! 愛してる!!!!!」 「やめて~~~」 私に抱きついて、全力でギューッとしてくる有紗。 2人くっついたまま、私たちはソラマチの方に向かった。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加