バナナムシ大量発生!!

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 善二が鎌田という若い男性店員に商品の配置について苦情申し立てをしていた頃それは起きた。 「何、あれ」  近くにいた中年女性が背後の窓の外を指差した。  善二は最初それが雨雲だと思った。  それがブウウンと唸り声を響かせながら店に近づいてきたのを見て初めてバナナムシの大群と分かった。  奴らはやがて店の強化ガラスにバチンという音を響かせて激突を繰り返した。今にもガラスが割れそうな勢いだった。  叫び声が上がり、人々は逃げ惑い、子供達は泣き喚き、カートに置き去りにされた大型犬は吠え、駐車場に飛び出した者達は虫の容赦ない襲撃に倒れる。まさに地獄絵図だ。客が飛び出した拍子に開いた自動ドアを潜り抜けてきたバナナムシは1mほどになろうかという大きさで、時速60キロは悠にに超える速さで善二の方に向かって来て危うく目をやられる寸前でしゃがんで避けた。 「何とかしろ!」と善二は鎌田に叫んだが、「何とかと言われましても……」と情けない返事が返って来る。 「全くどいつもこいつも役に立たない、店長を呼べ!!」 「は、はいぃ〜」  店員がスタッフルームに消えたあと善二は近くにあった木材を振り回し、生肉コーナーで次々に客を襲おうとしているバナナムシを地面に叩き落とした。そこに一人の勇敢な少年が駆け寄って来て虫の動きを封ずるべくタモを振り下ろしたが、バタバタと暴れ回る虫を見た二足の草鞋の妻春子は蒼白で口元を押さえ、夫敏夫は「さっさと殺してしまえ!」と殺気立った。  バーコード頭の店長平井が透明な衣装ケースを持って来て巨大バナナムシを中に入れた。外では凶暴化したバナナムシの群れが殺意剥き出しで強化硝子や自動ドアに激突し続けている。 「危険なので外に出ないで下さい!」  店長は拡声器で呼びかけ自動ドアの電源を落とした。
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