言い訳

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言い訳

佐竹は俺の大学時代の友人の1人で彼は検察官になった。2つ下の弟は刑事だ。 中嶋健吾は前からヤクザと繋がっていて身寄りがない子を拾ってきては20歳になったらヤクザに売ってその報酬をもらってるのではないかと噂になっていた。 それに、あいつの女好きは有名で特に巨乳が好きだと言われている。だから咲希ちゃんは元々対象外。20歳まで囲って、誰にも触らせないで20歳になったら切り捨てる。最初からそういうシナリオだったはずだ。じゃあ今は探してるんじゃないか?約1年半も手元に置いていた咲希ちゃんがいなくなったら、報酬はもらえなくなる。早く奴の証拠を掴まないと、ヤクザに情報が入っていたらまずいことになる。しばらく買い物は一緒か、もしくはネットでもいいな。かわいそうだけど… 咲希ちゃんには怪我をして荷物を持つのが大変だからと一緒に行くかネットで買い物をしてくれと言い訳を考えた。ギプスが外れるまで約1ヶ月くらいか…それまでに解決するといいのだが、幸いこの地域はあいつの遊んでたりする地域ではないし、このマンションはセキュリティーはいいからな。コンシェルジュもしっかりとした経歴の持ち主だし、でも万が一に備えて母さんとあゆみにも協力してもらおう。荷物の受け渡しも直接の手渡しは控えるようにしないと。考えれば考えるほど守れる方法がこれでいいのかわからない。ただ、咲希ちゃんにはこれ以上、辛い思い、苦しい思いはしてほしくない。ただ…それだけだ。 次の日、起きてからシャワーを浴びてリビングに行くと咲希ちゃんがキッチンに立っていた。 「おはようございます」 「おはよう。よく眠れた?」 「はい。大きいベットで寝心地もよかったです」 「それはよかった。何してるの?」 「ホットサンド作ったんです。もしよかったらどうですか?コーヒー今入れますね」 「コーヒーは自分でできるから大丈夫だよ」 「でも私…」 家政婦だからという咲希ちゃんの言葉を遮って、昨日考えた言い訳を伝えた。咲希ちゃんはすんなりとその案に乗ってくれた。もっとごねたりするのかと思ったが、特に何をいう訳でもなく、ただわかりましたと…それがなんだか何かを諦めているような気がしたが母さんや、あゆみにも周知しないとという気持ちから咲希ちゃんの心の中を覗こうともしなかった。本当は心の中で傷ついていたというのに… 「じゃあ行ってくるから、今日は夜に打ち合わせがあるから晩ごはんはいらないよ。好きなの食べていいからね」 「わかりました。行ってらっしゃい」 流石に昨日の今日でハグするのは躊躇ったので、頭をポンポンするだけにしておいた。 事務所に向かい、まずは親父に報告をした。咲希ちゃんは俺のマンションにいること、そして咲希ちゃんと一緒に住んでいたのがあの男だったことも。 「そうか、咲希ちゃんも餌食になるところだったのか…」 「はい。一応マンションから出ないように伝えましたが、母さんとあゆみにも咲希ちゃんのことを頼む予定です」 「わかった。それで咲希ちゃんにはなんて言って繋ぎ止めたんだ?」 「それは…俺の家政婦をお願いしました」 「家政婦?」 「はい。それしかアイデアが思い浮かばなくて…」 「大丈夫か?」 「はい?」 「咲希ちゃんだよ。だってそうだろ?中嶋の家でも家政婦同然の生活、お前のところでもって…自分にはそれしかないんだと思うかもしれない。まぁお前とは結婚の約束もしていないからわからないけどな」 「そんなわけ…俺はただ彼女がこれ以上どこかに行って傷つかないようにと思って…」 「お前の気持ちもわかるが、こればかりは彼女に聞いてみないとな」 「ちゃんと咲希ちゃんの気持ちを聞いてみるよ」 「それがいい。そうしなさい」 「わかりました」 それから俺は母さんとあゆみに連絡をしたが今日は2人とも予定があって行けないと言われてしまった。念の為、コンシェルジュにも問い合わせて咲希ちゃんが家から出ないように、もしマンションから出そうになったら連絡が欲しいと…咲希ちゃんのことは気になるが仕事はいくらでもあるのでこなさなくてはいけない。夜は打ち合わせと会食で帰りが22時を過ぎてしまった。 「ただいま」 玄関を開けたら出迎えてきてくれると期待していたが、咲希ちゃんは来なかった。リビングを開けると部屋は真っ暗だった。もう部屋にいるのかと思ったが心配になり咲希ちゃんの部屋に向かったが鍵もかけてないその部屋は誰もいなかった。コンシェルジュにも先ほど確認したが出てってないと言われたのに…とりあえず俺は自室に戻って荷物を置いて書斎を確認しにいった。そして見つけた。書斎のソファーの上で小さく丸まっている咲希ちゃんを…こんなところにいたのか…ここにはたくさんのいろんなジャンルの本が置いてある。咲希ちゃんにもここにある本はいつでも読んで構わないと言っていたが…髪にかかっている髪をよけてあげると頬に涙の跡があった。泣いたのか?それに胸に大事そうに抱いている本を取ると、それは「1人でも寂しくない」という本だった。 「咲希ちゃん…俺は咲希ちゃんを1人になんてしないよ」起こすのもかわいそうで落ちていた布団をかけ直してあげた。
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