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咲希ちゃんの気持ち
病院に着くとあゆみが待っていてくれた。
「先生が話たいことがあるみたいよ。一緒に聞こう」
そう言われて面談室に向かった。しばらく経つと女医さんがやってきた。
「初めまして。小山です。高橋咲希さんの担当をさせていただいています」
「初めまして園田です」
そう言って名刺を差し出した。
「海老名あゆみです。園田のいとこになります」
先生は入院中の咲希ちゃんの様子を教えてくれた。現在は点滴をして落ち着いてるという。ただ今まで食事をしなかったので受け付けないらしい。
「失礼ですけど、彼女は心に闇があるように感じます。1人で泣いてることも多いんです。辛いことがあったのかまではわかりませんが…夜もあまり眠れないようなので今は睡眠導入剤を出しています。このままだと回復が難しいと感じたら心療内科の先生に見てもらうことになります」
「わかりました。よろしくお願いします」
俺たちは咲希ちゃんの病室に向かった。
「大輔、咲希ちゃんとよく話した方がいいよ。咲希ちゃん昔から自分の意見を言えなくて、いつも1人ぼっちだったから」
「そうだな…」
咲希ちゃんの部屋に行くと1人で外を眺めていた。
「咲希ちゃんごめんね」と謝ると私こそご迷惑をかけてすみません。と謝られた。
「咲希ちゃん、ここ数日ちゃんと食べてなかったの?俺が食べなかったから?」
「違います。最初は調理して食べてたんです。でもここ2日間はあまり身体がご飯を受けつけなくなっていて朝は炭酸水、お昼頃から夕方まで水を飲んで過ごせたんです。でも1食くらいは食べようと夜に少しのご飯と残りの食材を食べていましたが、お水と炭酸水だけで大丈夫だったので」
「食べられなかったの?」
「そうですね…」
「どうして教えてくれなかったの?もしかしたら倒れなかったかもしれないのに」
「すみません。相談しようと帰ってくるの待ってたんだけど大ちゃんいつも遅くて、気がついたら朝になってて、まさか倒れるなんて思ってなかったので、ごめんなさい」
「いや俺も一緒に食べれなかったから。もしかしてネットで買い物するの嫌だった?したことない?」
「あります。でも家政婦なのに、主人である大ちゃんが食べない食事代に自分が使うのは申し訳なくて…」
「咲希ちゃん…そんなことないよ。いいんだよ使ってくれて、そのために渡したんだから」
「ねぇ咲希ちゃんはさ本当は大輔の家政婦嫌だったんじゃないの?」
ずっと黙って話を聞いていたあゆみが話し始めた。
「えっ?」
「大輔の家政婦になったから、前に暮らしていた人みたいに裏切られるのが嫌で頑張ろう、ちゃんとしよう、嫌われないようにって。違うかな?」
あゆみは児童心理司だ。咲希ちゃんと会った施設でボランティアをしたときに、たくさんの子ども達と会って接したときにもっと子ども達と寄り添いたいと思って心理司になった。
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