目が覚めたら

1/1
前へ
/31ページ
次へ

目が覚めたら

目が覚めるとまだ外は真っ暗だった。時計を見ようと起きあがろうとしたが、なんだか温かいものに背中が包まれてる気がした。それよりここは?私いつ帰ってきたの?寝返りを打ったら端正な顔立ちの大ちゃんが目を瞑って眠っていた。寝てる姿もかっこいいんだな〜なんて眺めてる場合じゃない。一体この状況は?何?何があった?私は昨日のことを必死で思い出そうとした。確か昨日はあゆちゃんとマキさんのお店で美味しい料理食べながら勢いで大ちゃんへの不満を言ってて間違えてあゆちゃんのワインを一気に飲んだことは覚えてるがそのあとは……思い出せない…… やらかした?こんな状況で処女捨てたの?そっと目線を落とすと昨日来ていたワンピースのままだった。よかったという気持ちと、やっぱりこんな状況でも手を出されないんだなっと複雑な気持ちになったが、とりあえず大ちゃんが起きる前にベットから出ようと起きあがろうとしたら大ちゃんに抱きしめられた。 「おはよう咲希。お誕生日おめでとう」 目が合うとそのままキスをされた。 「おはよう…大ちゃん」 大ちゃんの顔が見れずに俯いていると顎に手をかけ持ち上げられて大ちゃんの方に向けさせられた。私を見つめる瞳は私のことが愛しくてたまらないと言う甘い雰囲気が漂ってるような気がする。いつもの大ちゃんと違う真っ直ぐな瞳に見つめられて心臓がドキドキと音を出しはじめた。 「咲希、昨日のことは覚えてる?」 「昨日ですか?」 さっき思い出そうとして失敗したやつだ…何かやらかしたんじゃないかと思い口を開こうとしたら唇を塞がれた。 「昨日もキスしたけど覚えてる?」 昨日?昨日したって?戸惑っているとクスッと笑って、その様子じゃ忘れてるかな?と言われた。 「あの…何かやらかしましたか?」 恐る恐る聞いてみると 「0時を回ったから20歳になったけど今後は俺がいないときにお酒を飲むのは禁止だからね」 とニッコリ笑って言われてしまった…一体何をしたんだろう?そわそわと落ち着きがなくなってくる。 「咲希の思いに気がつかなくてごめん」 と謝られた。どうして謝られてるのかわからない私に大ちゃんは教えてくれた。 あゆちゃんとマキちゃんのお店でご飯を食べた。その時にあゆちゃんから大ちゃんとの関係がうまくいってないんじゃないかと指摘された私は女として見られてないだとか、1人ぼっちで可哀想だから置いてくれてるとか…とにかく寂しいと言ってたそうだ。 大ちゃんがお店に迎えにきた時には私は机に突っ伏して寝ていたようで、大ちゃんに抱えられるようにしてここに帰ってきた。私の部屋に入るのを躊躇って大ちゃんの部屋のベットに寝かされたと…そのあと私は 「大ちゃんに寂しいって言ったら?とかどうして抱いてくれない?とかいつまで側に入れる?いつか捨てられちゃうの?とか言われたけど覚えてない?」 なんとも恥ずかしすぎる失態に顔を両方の手のひらで覆った。 「咲希?俺はそれに対してちゃんと答えたよ。もう一度言うから手を離して俺の顔を見てくれないか?」 そう言われて手を離して大ちゃんの顔を見た。真剣な目で見つめられて何を言われてもいいと覚悟した。 「咲希はこれから先もどこにも行かせないよ。俺とこれからもずっと一緒だ。苦しんでるのも知らずに1人で寂しい思いをたくさんさせてごめん。もう手離せないから覚悟して?俺の愛は咲希が思うよりもきっと重いから」 そう言うと両頬に手を当て大ちゃんの顔が近づいてきたと思ったら唇にキスをされた。キスの経験がない私はそれだけで顔に熱が集まるのに気がついた。そのあとも大ちゃんは甘い目で私を見つめながらおでこ、まぶた、目じり、両頬、顎先に咲希は可愛いよと言いながらキスを落としてきた。私はもう顔が沸騰してるんじゃないかと思うくらい身体も暑くなってきた。 「咲希と一緒にいて俺はいつも生殺しのようで辛かったんだぞ」 と言う大ちゃんに 「生殺しって?」 「咲希が可愛くてどうしようもなくて、頬やおでこのチューだけじゃ物足りなくて早く咲希を抱きたいと思ってた。でも咲希はきっと大人の経験がないだろうから慎重に怖がらせないようにと思って手を出さなかった。それが咲希にとって悲しませてたなんて気がつかなくて本当にごめん」 私は首を横に振るしかできなかった。 「じゃあ咲希、覚悟はできてる?これから俺に愛される覚悟」 「覚悟ですか?」 「そう。初めては痛いっていう子もいるから、痛くないように時間をかけて愛すんだけどさ」 「これから?」 「そうこれから」 「えっ…大ちゃん仕事は?」 「今日は休み」 「あっでも私お風呂に入ってなくて」 「そうだね。じゃあ後でゆっくり2人で入ろうか?」 「大ちゃん、それは流石に…」 「そうだな。ハードルが高かったな。でもいずれはな」 私はこれから大ちゃんに抱かれると思うと嬉しさと怖さが半分ずつ、そして…本当にいいのだろうか?本当に大ちゃんは私でいいのだろうか?と疑問になった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加