再会

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再会

園田大輔さん。やっぱり大ちゃんなんだよね。こんな所にいたんだ。知らなかった。昔からかっこよかったけど、思ったよりもずっとかっこよくなって。やっぱり弁護士さんになったんだ。でもスーツじゃないってことは仕事じゃなかったのかな? 大ちゃんと出会ったのは私が施設にきてすぐの頃だった。大ちゃんはそのとき大学生でたしか私より10歳年上のお兄さんだった。 私がいた施設は学習支援のボランティアの人が週に1回、他にも4人の人が勉強を教えてくれり、遊んでくれたりた。そのときの私は人が怖かった。母や母の彼氏に叩かれたりしていたせいで特に男の人の大きな手が怖かった。 ある日、いつも教えてくれたあゆちゃんが来れなくて、その時にきたのが大ちゃんだった。背が大きい大ちゃんは、小さい私の前に屈んで自己紹介してくれて手を差し出してきたけど、怖かった私はその手を掴めなかった。その後、何回か勉強を教えてくれた時に褒められて頭を撫でられそうになったことがあった。つい癖で身を縮こませてしまった時 「ごめんね」と大ちゃんはとても傷ついた顔をしていた。その後も大ちゃんは来るたびに私に声をかけてくれるようになった。 そして自分はいつかお父さんと同じ弁護士になりたいこと苦しんでる人を救いたいと教えてくれた。勉強も学校の先生よりわかりやすく教えてくれて優しいお兄さんと思っていた。大ちゃんは1年間だけだったけど週に1回来てくれた。でもあれ以来、頭を撫でられることはなかった。1度、学校で派手に転んで頬と手に大きな絆創膏を貼って学校から帰ってきた時も私が怖がると思ったのか「痛そうだね。痛いの痛いの飛んでいけ〜」と言うだけで私に触れることをしなかった。きっと触ろうとすると怖がる私を面倒な子だと思われたと思っていた。でも私はいつの頃からか大ちゃんが好きだった。優しい大ちゃんと手を繋いでみたかった。他の子が大きな手に繋がれてるのを羨ましく思ったが、何も言えなかった。 って…そんなこと考えてる場合じゃなかった。 今日泊まるところ探さないと…ネカフェでも行こうか…と一歩踏み出そうとしたら 「いったーい」ビルの段差にスーツケースが引っかかり派手に転んでしまった。雨に濡れたアスファルトにスーツケースごと転がった私は、まるで濡れネズミだ…人生うまくいかないときは上手くいかないんだ。涙が頬を流れた。しばらく動けずにその場にいると  「大丈夫ですか?」 後ろから女性に声をかけられた。 痛む足と手を庇いながら起き上がった。 「どこか痛いの?」 「膝と手首が…」 転んだ時に膝を付いてしまった…手首はスーツケースを持ってたから変な方向に捻ったような…それにしてはジンジンして左手で押さえてないと痛すぎる。涙目になりながらも、ここにいつまでもいたらいけないと思ったら、その女性はちょっと待ってて、と言ってスーツケースを端に寄せて、またビルの中に駆け出していった。 右手首が痛すぎて左手で押さえながら蹲った。 しばらくするとヒール音が聞こえてきて、さっきの女性に声をかけられた。 「歩けるかな?このビルの3階に病院があるの。先生診てくれるって言うから行こう?」 スーツケースを持ってもらい歩こうとしたけど手首が痛い。それでもこのままいる訳にはいかないと、痛む足と手を支えながらゆっくり立ちあがろうとしたら 「どうした?」 大ちゃんが来た。 「先生この人、転んでしまって、かなり痛そうなんです。椎名先生診てくれるって言うから行こうと思って」 「悪い、抱き上げるぞ。あとで文句を言ってもいいから」そう言うと私を抱き上げてエレベーターに乗り込んだ。女性も私のスーツケースを持ってエレベーターに乗ってきた。痛すぎて朦朧としてきた意識の中で、頑張れ、もう少しだからと言う優しい声を聞きながら私は意識が途絶えた。 目を開けると白い天井が見えた。そして薬品の匂いがした。 「目が覚めたか?」 声のする方に目を向けると大ちゃんと目が合った。 「すみません…私…」 「派手に転んだようだな。膝は擦りむいてるだけで足首は大丈夫だが…右手首は骨折してるからギブスをしてる」 「えっ骨折ですか?」 「あぁ…そういえばキミ家は?それともどこかに旅行に行く予定だったか?」 「いえ…私は…」 「何か事情がありそうだが…」 「やっと目覚めたか。痛くて気絶しちゃったんだね。どれどれ見せてね」 そう言って白衣を着た、高齢の男性が私の脈をとった。 「きみ、もう少しご飯食べようか…痩せすぎだから、今日はこのまま帰っていいよ。痛み止めをあげるから痛くなったら飲んでね。しばらく痛いと思うけど…たくさんご飯食べて、ゆっくり寝るんだよ。大輔、送ってやりなさい。大変だから、旅行は骨折が治ってからにした方がいいよ」 「ありがとうございました」 「そういえば…名前を教えてくれるか?」 「えっと…高橋、咲希です」 「送っていくから」 大ちゃんが私のスーツケースを持とうとして声をかけた。 「あの…私行く所ないんです。だから今日はネカフェにでも泊まろうかと…」 「行く所ないのか?」 「はい…」
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