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一人芝居『下町親父の恋愛指南』 前編
登場人物:高校生の娘を持つシングルファーザー
舞台:家庭の居間
舞台装置例:中央にちゃぶ台、上手に仏壇、下手に玄関、下駄箱、上手奥に別間に続く廊下か階段
(素舞台でも可)
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〈開幕〉
下手玄関から入り下駄箱に靴をしまう
中央の娘に向かって
(一人芝居なのでいる体で)
「ただいま」
中央の娘の顔を覗きこむ
「ただいまって言ったら何て返すんだ?
そうだ、おかえりなさいだよな。父さんいつも言ってるだろう、挨拶はしっかりするように。
どうしたんだ?
辛気くさい顔をしてスマホを見て。
えっ? 好きな男に告白メールを送るか悩んでる?
バカヤロウ!
恋心を伝えるのにメールなんて使うんじゃねえ! そんな空気を伝わる電波なんかに思いを乗せたら、大気の中でお前の気持ちが薄まっちまうじゃねえか。
いいか、恋心を伝えるのはラブレターって決まってるじゃねえか。
えっ?
古臭い?
昭和じゃないんだからって?
バカヤロウ!
何でもかんでも機械に任せるんじゃねえ!
一文字一文字丁寧に魂を刻んで書けば、きっと相手に届くんだ。
父さんだって、母さんに恋文送って……
バカ! 恥ずかしいこと言わせんじゃねえ!
そうだな、こういうモンは独りで書くのがいいな。自分の部屋でゆっくり書きな。
おう!
後で夜食作ってやるからな。
しっかりな」
娘が部屋に入るのを眼で追った後、仏壇に向かう
「母さん、アイツも恋に悩む年になったよ。
年がら年中アニメばっかり見て、挙げ句アニメの男のポスターを部屋中に貼って、実際の男に興味ないんじゃないかって心配してたのによう。
めでていじゃねえか。
おう、そうだ。赤飯炊かなきゃ、夜食は赤飯だな」
いそいそと上手にハケる
〈暗転〉
(続)
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