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夜の校舎
あたしは、その夜遅く、学校に行った。
もう、学校には、誰もいなくて、夜の校舎は、死んだ灰色の大きなクジラのようだった。
あたしは、校舎の屋上に上がった。
あたしは、ここから飛び下りて死ぬつもりだった。
屋上の暗がりの中を、隅の方に進んだ。
すると、手すりの前に、何か黒いかたまりがあった。
目を凝らして見ると、それは、人が、しゃがんでいる姿だった。
その黒い人影が、あたしの気配に気付いて、振り返った。
「、、北沢さん?」
その黒い人影が、言った。
その声は、清原先生だった。
「清原先生、、? 何してるんですか? こんなところで、、」
あたしは、自分がしようとしていることを忘れて、訊いた。
「いや、、もう、、死のうか、と思って、、」
清原先生は、弱々しい声で、呟くように言った。
そして、続けた。
「北沢さんは、どうして、こんなところに、こんな時間に?」
不思議そうに訊く清原先生に、あたしは、言った。
「あたしも、同じです」
「え?」
「死にたいんです」
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