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こうして、ゆり子さんとの勉強が始まった。
ゆり子さんは、高校の教科を全般的に教えてくれたが、中でも、数学が得意のようだった。
そんな時、あたしは、あることに気が付いた。
ゆり子さんの書く、数学のXが、あの清原先生のXの書き方と同じだということに。
まあ、X書き方は、二種類しかないし、珍しいことではない。
でも、あたしは、清原先生のことを思い出し、ゆり子さんに話したくなった。
もう、その頃には、ゆり子さんに何でも話せる程、仲良くなっていたのだ。
「ゆり子さん、、前の学校を辞めた担任の先生、酷かったの。あたしが、死にたいって言ったのに、何もしてくれなかったの」
あたしが、そう話すと、ゆり子さんの表情が、急に暗くなった。
そして、呟く様に言った。
「教師って、大変なのよ、、」
「え?」
もしかして、ゆり子さんは、先生だったのかな、、。
あたしは、そう思ったけど、なんだか訊ける雰囲気ではなかったので、黙っていた。
しかし、ゆり子さんは、ずっと、あたしの家庭教師を続けてくれた。
そうして、一年が経った。
その間、あたしの生活環境も変わった。
お母さんは、ゆり子さんの勧めで、ホステスを辞め、スーパーのパートに転職し、毎日家に戻って来るようになっていた。
あたしも、将来、なりたい職業が出来て、大学で、学びたくなった。
それは、教師だ。
あたしみたいな、苦しい思いをしている生徒を助けたい、、。
清原先生みたいに、見捨てたりしないで、、。
そう思ったのだ。
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