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田舎の寒村というと、なんとなく“因習がありそう”“変な神様でも信仰していそう”なイメージがある人もいるかもしれない。
実は、私達が移住した村も昔はそうだったようなのだ。
大正時代くらいまで、この村には何らかの神様と、それをお祀りする神社があったという記録が残っているという。ところが度重なる土砂崩れや洪水で神社そのものがなくなってしまい、村も貧しくなってお祀りするどころではなくなってしまったのだとか。
それで、今は村に、そういった風習は残っていない。
学校で仲良しになったアキちゃんはオカルト系が大好きらしくて、教室でもそう言う話を嬉々として語ってくれたのだった。
「正直おれはものすっごくつまらんねん。不思議な守り神様がいて、禁域があって、特別なお祭りがあって……みたいな方が、ホラー漫画っぽくて面白いと思わん?」
「あはは……大抵そう言う場所って、なんらかの惨劇の舞台になったりするし。大抵村の人、巻き込まれていっぱい死ぬと思うんだけど……」
ホラーで因習とか変な宗教とか儀式とかは洒落にならないのだ。私は、カメラを持って除霊するゲームを思い出しながら言った。以前従兄の家でプレイさせてもらったが、怖いわ難しいわ迷子になるわグロいわで軽くトラウマになったのである。
別に守り神様とかがいてもいいけれど、ホラー系の主人公になるのはごめんだ。いや、サブキャラになる方が嫌かもしれない。主人公はなんだかんだで生き残ることも少なくないのだから。
「アキちゃんは、そういう話興味あるんだね。詳しいんだ?」
私が尋ねると、まあ、と彼女はそばかすだらけの頬を掻いて笑った。
「都会の洗練された怪談みたいに、シュッとした雰囲気じゃねえんだけどなあ。まあ、未だに木造の校舎使ってるようなトコはそうそうねえとは思うけども。そういう意味じゃ、未だにトイレに花子さんとかいるかもしんねな!」
「あはは、確かに」
「それよか、おれは地震とか起きる方がこええな。あ、リッカ、地震だーって思ったら机の下に避難するんじゃなくて、さっさと窓から外に出た方がええぞ。うちのガッコのボロさじゃ校舎ごと潰れかねねえしな!おれもさくっと飛び出すことにすんべ」
「そっちの方がホラーだよ!?」
なにそれ怖い。オカルトとは別方向に震え上がる私。
確かにこの校舎、どうして今でも放置されてるんだと思うほどボロくはある。今日も雨が降っているが、廊下のあちこちにバケツが置かれている現場を目撃していた。雨漏りが酷いためだ。
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