みみず、みみず。

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「もうこの村に守り神様はいねえと思うが、入っていけねえと言われてる場所は多いから注意してな」  彼女は窓の前に立つと、例えば、と正門の方を指さした。 「おれらのガッコから結構近ぇとこだ。おれらが住んでる住宅地からこの学校に行く途中、裏山の脇のあぜ道を通るだろ?あぜ道の途中、北に折れる道があるのは覚えてっか?」 「うん」 「あの道の先には洞窟があるんだけども、立ち入り禁止になってんだ。中は急な下り坂になってて、ぐしょぐしょの泥だから入ったら滑っちまって出られなくなっちまうんだと。元々はその先に神さんの社があって階段もあったそうだけんど、洪水の時に崩落して使い物にならなくなっちまったらしい。まあそういうわけだから、あぶねえってんで絶対入るなってなってんだ。特に子供はな」 「へえ……」  そちらの道に入ったこと自体がなかった。まさか洞窟があったとは。自分がもう少し幼くて、悪戯好きの男子であったりしたなら、大人が止めても探検したがったかもしれない。 「マジで、行ったらあかんで」  珍しく、アキが釘をさしてきた。 「自分も入口までなら行ったことある。昔の神様の社があった洞窟なんて神秘的だし、オカルト好きとしては外せないスポットだし。でも、本当に中まっくらで、急な坂道が続いてる感じで……まあ、入ったら相当やばいだろうなーってのは伝わってきてん」 「アキちゃんが言うならよっぽどだねえ」 「おれはホラーとかオカルトは好きやけど、底なし沼に沈むとか生き埋めになるとかはごめんやけ。というわけで、興味あっても入口で覗くくらいまでにしとき。あと、見つかったらめっちゃくちゃ怒られる。おれは入ってないのに、覗いてただけでオトンに見つかってゲンコツくらったかんな!」 「しっかり話にオチがついてらっしゃる」  あははは、と私も乾いた声で笑うしかなかった。  まあ何にせよ、そちらに近づかなければいいだけの話だろう。ホラーは私も嫌いではないが、崩落するような場所に近づいて怪我をしたい趣味なんぞはない。 「そもそも、その神様ってどんな神様だったの?」  私が尋ねると、アキちゃんは肩をすくめた。 「一応、雨をつかさどる神様だったらしいで。たくさん小さな僕がいて、それで村守ってたとかなんとか」  その社が潰れた原因、洪水とか土砂崩れだとか言ってなかっただろうか。  信憑性がないなあ、と私は呆れるしかんかあった。
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