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何日か雨が続いてようやく晴れた。洗濯物を干すなら今日がチャンスですよ、と天気予報の人が笑って言っている。
僕の家は乾燥機付きの洗濯機だからあまり関係ないんだけど。晴れたのならやっぱり外に出たい、買い物行きたいし。この時期は雨続きで憂鬱だ。雨の日は別にいいんだけど、雨上がりは嫌な記憶が蘇る。
家を出て歩く、雨上がり独特のもわっとした湿気。暑くなるかな、と思いながら歩いている時だった。
「水たまりたくさんあるでしょ」
突然後ろから声がした。最初僕に話しかけられているとは思っていなかった。ねえねえお兄ちゃん、と声をかけてきたので、どうやら僕に言っているらしいとわかる。
「大きな水たまりがたくさんできるとね、バカが増えるんだよ」
「馬鹿?」
女の子だろう、意味がわからず首をかしげた。すると女の子はケラケラと楽しそうに笑う。
「久しぶりに雨が降るとね、面白いの。水たまりにトンボが卵を産むんだよ」
トンボの幼虫はヤゴだっけ、水中の生き物だったんだったかな? 確かにずっと雨が降らないと水辺がなくてトンボは困るだろう。ようやく見つけた水。田んぼや川なんかと勘違いするってことか。
「干からびちゃうのにね、一生懸命卵を産むの。バーカ!」
キャハハハと笑ってタタタッと走り去っていく。トンボからしたら一生懸命なだけなんだけど。子供って残酷だ。
再び歩き出すとまた「ねえねえ」と話しかけられた、さっきの女の子だ。
「大きい水たまりがあるとね、カエルが卵を産むの。でもオタマジャクシになる前に干からびちゃうんだよ。そんなところで産むからだよ」
「それは蛙にはわからないからね」
「前なんてオタマジャクシがうまれちゃったところがあった。でもまた暑くなって、干からびたらみんな死んじゃった。バーカ!」
タタタっと女の子はどこかに走っていった。オタマジャクシからしたら地獄だ。どんどん水がなくなって呼吸ができなくなって。蛙になっていれば生き延びていたかもしれないけれど。住むところがだんだん小さくなっていく、絶対に生き残ることができない。
ドラッグストアで買い物をして少し歩いた時だ。
「ミミズがいっぱい道に出てくるの。でもあっという間に乾いちゃってミミズはパリパリになっちゃう。バーカ!」
雨の日と雨上がりはミミズだらけで気持ち悪い、と小学生の時みんながよく言っていたのを思い出した。
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