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「わたし、何言ったの……?」
暗転した画面の前で硬直していた春風から発された第一声だ。
瞬きを繰り返し、乾ききった口で手を当てる。開いた口が塞がらない。
「荒木くんが、ミュラくん」
「ミュラくんが荒木くん?」
「荒木くんに、嫌いじゃないなんて、言っちゃった」
「ミュラくんも荒木くんも傷つけちゃったかも」
「あぁ、どうしよう」
春風の頭は不安でいっぱいだった。不安で満ち、思考回路がショートしかけていた。
うまく回らない口で、今起きたことを声に出して振り返る。
いつの間にか、手の震えは止まり、目は熱を帯びていた。
春風は思い切る。
「荒木くんに、会いに行こう」
春風の荒木への思いは、彼女を強くした。不安も彼女を強くした。
春風が大きな一歩を踏み出した瞬間だった。
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