春一番

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「なるほどね? 本名聞いちゃったんだ。しかも自分だけに教えてって」 「ハイ……」 「それであの時は口開けて気絶してたんだ」 「気絶しかけてました……」 「そのミーティングの当選通知が昨日の18時に来る予定だったのね。ご愁傷様」 「ハイ、なんで私は、あんなことを」 「背中押しちゃった私も悪いかもしんないけどさぁ、あんたそんなにぶっ飛んでるとは思わなかったわ。次回に備えよ? 切り替え切り替え」 「ハイ……、でも、今回はどうしましょうか」 「諦めるしかないでしょ、外れちゃったんだし」 「ううん、当たっちゃったの」 「え?」  友人は目を丸くする。私だって当選通知を見たときは唖然とした。今日までの一週間、送った質問を思い出しては後悔する日々を送っていた。あれは夢で、実は別の質問を送ったのではないか。応募完了メールこそきても、質問内容の確認メールはなかったため、そう考えることでやり過ごしていたくらいだった。  それなのに、昨日の当選メールに現実を突きつけられた。 『質問内容:本名を私だけに教えてください。』  二度見どころでは済まなかった。 「それ危険じゃない?」 「危険、って」 「本名を教えて何する気なの」 「……確かに?」 「素顔も分からない配信者が本名を教えるって。あんた危機感持ちなさいよ」 「教えてくれるとは、限らないから」  自分の言葉に妙に納得する。  そうだ。教えてくれるとは限らない。三浦という名前ではないことを話すのかもしれない。それで終わりかもしれない。  それにこの当選は、ブラックリスト入りを免れたとも言えるのではないか。  だんだんと沈んだ心が軽くなってきた。 「……いける気がする」 「どうしたどうした。ま、元気ならいっか。男性スタッフが出てきて脅されたりして~」  友人はケラケラと笑って、今日も出かけて行った。   そんな怖いことを言い放ってから、私を一人にするなんて、ひどい。  部屋に一人きりにされた私は、膝を抱えて肩を落とした。
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