春一番

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「んんっ。あーあー。こんばんは!」    オンラインミーティング5分前。準備も済んだため、パソコンの前で1人、挨拶の練習に励む。さきほどから口内が乾いて仕方がない。水の飲みすぎで気分が悪くなりそうだった。 「はぁー」  ため息をつく。どうしてこんなことになったのか。  まともな質問をしていれば、ここまで緊張しなかったのではないか。後悔の波が押し寄せる。  いや、どちらにせよ緊張はしていただろう。もとより男性が苦手で、関わりの深い男性もいない私が、いくら応援している人とはいえ、まともに話せるとは思えない。  そういえば、中学生の時によく話していたあの男の子は元気だろうか。急にそんなことを思い出したが、目の前のことに集中しようと振り払った。  いくらシミュレーションしても、グリーティングをつつがなく終えられる未来が見えない。 「どうしよ……、っ!」  ピコン。グリーティング専用のアプリに、通話への招待通知が届いた。  ゴクリと喉を鳴らす。先ほどの友人の言葉がよぎる。  『男性スタッフが出てきて脅されたりして~』  頭をブンブンと大きく振ってその言葉を忘れようとする。  震える手を動かし、招待通知に応えた。
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