4人が本棚に入れています
本棚に追加
昔話:黒い血の魔女
昔々。世界は各地に現れた魔女によって、深い苦しみに沈んでいました。この村にも、魔女の疑いがかけられた者がおり、裁判にかけられました。
魔女は処刑され、神の名のもとに悪は滅びたかと思われました。
しかし、苦しみは続きました。人々は飢え、病が蔓延し、暗闇のみが、目の前に広がるようでした。
それもそのはず。魔女には娘がいたことが分かったのです。魔女の血を引く者がいたために、闇はこの世に残ったままだったのです。
幸いなことに、その娘は年端もいかぬ少女だったので、それさえ殺してしまえば悪は絶たれます。再び神の名のもとに裁けばよい、という話にまとまりつつある中、ひとりの若者が声を上げました。
「神ばかりに頼っていては、人に付け入る隙を見出した魔の者が、再び襲いかかるだろう」
「では、どうしろというのだ」
「私達だけで、悪を断つのだ」
村人達は戸惑いました。相手は魔女、加護なく害そうとしようものなら、何を以って抗われるか分かりません。
一度はその訴えを退けようとしました。
「大丈夫だ、私によい考えがある。皆で協力すればきっと、やり切れる」
その夜、魔女の娘の住処を探し当てた村人達は、一斉に娘を襲撃しました。眠りについていれば、魔女といえど無防備。抵抗むなしく、動かなくなりました。
しかし、翌日になって、確実に死んだことを確認するまで安心はできません。確認には、言い出した若者が向かいました。
黒い血の染みの中で、確かに娘は死んでいました。そして外にも聞こえるように叫びました。
「見よ、この黒い血を、穢れた血を! このようなものが、まともなものに流れているものか! だがそれも滅びた! 力を示した人の元に、魔が寄ることも無いだろう!」
そして、彼を讃え、再び魔女が生まれることがないよう、黒い要石が立てられました。そしてその要の力を支えるため、石の建物が要石を囲むように造られるようになったのです。
最初のコメントを投稿しよう!