黒い血の怪物

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黒い血の怪物

 ある意味、貴重な話だった。正義の後ろ盾は、ここまで人を盲目にするのだと。正しいということは、善いこととは時として無関係なのだと。  魔女の娘の身元であるとか、飢餓の原因だとか……色々疑問に思うところはあったが、そういった理屈っぽいことはあまり聞かないことにした。そのようなことは、きっとどうでもいい。少なくとも、この村にとっては。  だが、それでも、ひとつだけは聞きたくなった。 「村長さん」 「はい」 「魔女の娘から血が流れ出している、その瞬間には黒くなかったのではないか?」 「何を言いますか、そんなわけがないでしょう。あれは、まともなものではないのですから」  私は早めに調査を切り上げて、一刻も早く村を去ることにした。  ここの空気を吸っていると、私の血が黒くなってしまいそうだ。それこそ、彼らのように。
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