埴輪マン2 大和の苦悩

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僕はハニワンの指環を外した。 『どういう事だ?』 「少し…一人で考えたいんだ」 ハニワンをアパートに残し大学へ行った。 「…条、西条!」 「えっ?」 友人が心配そうに顔を覗き込んできた。 野口正和、高校時代からの友人だ。 「お前、本当に大丈夫なのか? 講義中もボーッとしてたぞ」 大好きな考古学の講義も頭に入らなかった。 「う、うん…」 「まだ、松井博士の事を気にしてるのか? …今、こんな事を言うのもなんだけど、博士がよく言ってたろ? 歴史は人の死の上に成り立っているって…」 確かに松井博士は人の死に関して当然の事と言っていた。 「…いつ死んでも良いくらいの覚悟はあるからね」 博士の口癖だ。 だからと言ってあんな死に方は、僕は納得出来ない。 「…でも、博士にはまだ教えてほしい事がいっぱいあったのに…」 「…残念だけどな」 野口は僕の肩に手を置いて首を横に振った。 「…ところで、西条はあの古墳で何か見なかったのか?」 「え?…何かって?」 あの事件はなかった事になってるはず。 「噂なんだけどな、あの古墳で化け物を見たって奴がいるんだよ」 「化け物?…それって誰が言ってるの?」 あの時の調査員なら知ってる人だかりだ。 「遺跡発掘の見学をしてた学生がスマホで撮影してたらしい…」 「…何が写ってたんだ?」 化け物が写ってるなら、僕も写ってるかも知れない。 「空を飛んでる黒い羽根の生えた化け物だってよ 西条はそんなの見たのか?」 「い、いや、知らないよ…」 友達に嘘を吐くのは心苦しい。 「まあ、調査員も誰もそんなの見てないって言ってるからフェイク動画なんじゃねえの?」 「そ、そうなんだ… 最近のフェイク動画はよく出来てるからね…」 これが本当だと知ったら世界はどうなるんだろう? やっぱりパニックになるのかな。
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