友達なんて

1/3
前へ
/27ページ
次へ

友達なんて

「今日も向井先輩カッコよすぎるよ!! さっき廊下で見掛けたんだぁ!!」 「良かったね、梓」 何だか、向井先輩の本音を聞いてから…先輩が可哀想に思えてきた。 演技って言っていたっけ。 寄ってくる女子たちを喜ばせる為の演技。 「……」 日頃はキラキラと眩しいのに。 雨が降ると、先輩の心にも雨が降る。 そんな先輩の心を…どうやったら晴らせるかな。 何だか最近、そんなことばかり考えている。 「そういえばね、美久。今度思い切って、先輩に告白してみようと思ってるの」 「……告白?」 「うん、先輩は私のこと知らないと思うけれど、好きが溢れて苦しいんだ。この想いを伝えたいって思っちゃって」 「……」 そんなことしたら、また先輩の心に雨が降る。 そう思っても、梓になんて声を掛けたら良いか分からない。 「……良いじゃん、頑張って…」 頑張らなくて良い。 先輩の心、泣いているから。 これ以上困らせたら駄目だよ。 …そんな思い、1つも言えない。 「美久が先輩のこと興味無くて良かった! 他の子たちは嫉妬して背中を押してくれないからさぁ!! 何だか勇気が沸いて来たよ!」 最低で、最悪。 先輩に対しても、梓に対しても中途半端。 …私は、上っ面だけの偽善者だ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加