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「あぁ、向井先輩…!!! やっと見つけました…! …ってか……美久?」
「…あ、梓…」
「何で、向井先輩と美久が一緒にいるの…」
梓はゆっくりと歩みを進め…私たちに近付いて来る。
不穏な梓の雰囲気に、先輩は小さく声を上げた。
「君は…何年の、誰さん?」
「…やっぱり、私のこと知らないですよね。…2年の、山寺梓です」
「美久ちゃんの、お友達?」
「………はっ、美久ちゃんって…。……何よ、何よ…!!」
梓はこちらに近付いて来ながら一筋の涙を零した。
全身を震わせ、その表情は怒りに満ちている…。
「美久……見損なったよ。あんた、私が向井先輩にキャーキャー言って、今度告白するんだからって言っていたの…心の中で笑っていたのでしょう…!!!」
「ちが……」
「最低、最低…!!! 私、向井先輩に告白しようと思って探していたの。そしたら、これ。美久……私を馬鹿にしやがって…!!!」
大粒の涙を零しながら眉間に皺を寄せる梓。
震えながら、歯を食いしばりながら…私の制服の裾を掴んだ。
そんな様子を見ていた向井先輩。
先輩は私の制服の裾を掴んでいる梓の手を振り払う。
そして、梓を少しだけ睨んだ。
「君らみたいな子たちに、キャーキャー言われるのも疲れるんだよ。美久ちゃんは俺に興味が無いから。話を聞いてもらっていただけ」
梓がずっと好きだった、向井先輩。
「え…疲れるって何。私らが邪魔みたいな言い方…。先輩、そんなこと言う人では無いじゃないですか…!」
正直、酷だと思った。
「『俺がそんなこと言わない』っていうのも、君の思い込みだよね。…残念だけど、俺はそこまでできた人間じゃないんだ。勘違いされると困るから勘弁してよね」
だけどそれ以上に
素直に思いを伝えた先輩は、とても格好良かった。
「……っ!!」
冷たい先輩の言葉。
梓は更に大粒な涙を零し…どこかへ走って行った。
…やってしまった。
完全に、やってしまった。
そう思ったけれど。
心は不思議とスッキリしていた。
「…美久ちゃん、ごめん。我慢できなかった」
「………いえ…」
先輩、そんなこと言って大丈夫だったのですか。
誤解招きますから、訂正した方がいいですよ。
…次に継ぐべき言葉が沢山出てくる。
だけど、そのどれもを…私は声に乗せることができなかった。
「美久ちゃん、巻き込んだみたいになって…本当にごめん。もし、友達に何かされたら…絶対言ってよね。1人で抱えないで」
「………」
『何か』って……高校生になってまで『何か』起こるかな?
少しでもそう思った自分は甘かった。
全学年の女子から人気の、向井先輩。
怒らせてしまった、梓。
やっぱり…ただでは済まなかった。
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