両想い

2/4
前へ
/27ページ
次へ
また、雨が降った。 今朝の天気予報では、今日雨が降る予報になっていなかったのに。 「……」 そう思いながらも、体は自然と教室棟に向かう。 雨が降るとあの場所に行くということが、もう癖になっているのかもしれない。 「……先輩」 「あ、美久ちゃん…」 いつも通り、3年の教室前に居た向井先輩。 私の姿を見つけると、走って私の元に駆け寄ってきて…優しく抱きしめられた。 「……先輩?」 「美久ちゃん、会いたかった」 そんな先輩の言葉に、小さく頷く。 今日の先輩は、いつも以上に退屈そうな…気だるそうな…悲しそうな…そんな、何とも言えない表情をしていた。 「先輩、無理していませんか」 「……無理は、していないよ」 そう言う先輩の顔を覗き込む。 目が少しだけ潤み、今にも泣きそうだ……。 鼻をすすり、何も言わない先輩。 「……」 いつも心で思うだけ思って、それを言葉にできない私だけど。 今日は……思ったことを、きちんと言葉にできた。 「…先輩」 「……ん?」 「先輩の心、どうすれば…晴らせますか」 私の言葉に驚いた表情をした先輩。 ……言えた。 ずっと…思っていたこと。 「え?」 「…先輩の本音を聞いた日から…ずっと、そんなことを考えています」 「……」 「私、先輩のキラキラした姿よりも、退屈そうで、気だるそうで、悲しそうな姿の方が…気になります」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加