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「美久ちゃん…俺、知っているよ。女子から存在を無視するような態度、されているんだよね」
「…はい、だけど…もう慣れました」
「そんなこと、慣れないでよ」
初めて先輩と一緒に歩く帰り道。
腕が触れるか触れないかの距離感で、2人並んで歩いていた。
「再来週、全校集会あるじゃない? そこでの生徒会長挨拶でさ、言っても良い?」
「な、何を……」
「美久ちゃんのこと。存在を無視することも、いじめだから」
「でも……」
先輩がそんなこと言うと益々悪化するし、先輩自身も学校内での立場が危うくなる。
「……人気者の先輩ですから。そこまでする必要はありません」
「違う。人気だからこそだよ。俺がちゃんと言うことで示しになる」
「……」
賛成……できない。
少し俯いて黙り込んでいると、先輩にそっと手を繋がれた。
「美久ちゃんが困るようなことは、絶対にしないから。信じて 」
「……」
何も言えなくて、なんて答えれば良いか分からなくて。
どうしようもない私は、また言葉を継げない。
「…………ちょっと、こっち」
「え」
先輩は繋いだままの手を引っ張り、建物の物陰に隠れる。
「せ、先輩……」
「美久ちゃん。聞いて」
私の肩に両手を置き、力強くも優しい瞳で見つめる先輩。
その瞳に、心臓のドキドキが強くなる感覚がした。
「どうしても、俺の方が先に学校から居なくなる。美久ちゃんはもう1年あるんだから。俺のせいで拗らせて…その後苦しい思いをして欲しくない」
「……先輩」
「だから今、酷くならないうちに俺が釘を刺す。それが今の俺にできる…精一杯のことだから……」
先輩の言葉に、ふと涙が零れた。
それを見た先輩は…また私を抱きしめる……。
「泣かないで、美久ちゃん」
「……色々とすみません」
「いや、俺の方こそ。美久ちゃんの学校生活を狂わせてごめん。だけど、美久ちゃんのことが好きで、大切にしたいと思うからこそ、どうか全校集会で話すこと、許して欲しい…」
「……」
また、ゆっくりと頷く。
それを見た先輩は嬉しそうに微笑んだ。
「…ありがとう。美久ちゃんが不利になるようなことは、絶対にしないから」
そう言って、そっと…そっと。軽く触れるように、初めてのキスをした…。
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