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勇者様に選ばれることは名誉なことだから「おめでとう」と口にしなくちゃと思うのに、なにも言葉にならない。ただヒューゴの背中に腕を回して、きつくきつく抱きしめる。
「ヒューゴ、怪我しないで……」
「うん、エリサの薬いっぱい持ってく」
「ヒューゴ、回復薬の飲み過ぎはだめだよ」
「うん、エリサの回復薬は毎日一本にする」
「ヒューゴ、迷子にならないように目印つけるんだよ」
「うん、エリサの頭文字を書くね」
こうやって抱き合っていると、ヒューゴの体温とさわやかな甘い匂いがして、深く匂いを吸い込む。ずっと毎日一緒だったのに……。
「……ヒューゴ、好き」
ヒューゴの身体がびくんと震えて固まった。
「あ……ご、ごめん、今の忘れ、」
「俺もエリサを愛してる! エリサ、結婚しよう」
「…………へ?」
「エリサは恋や結婚に興味ないんだと思ってたから、少しずつ逃げられな、いや、ゆっくりエリサの気持ちを育てていこうと思ってたのに……両想いだったなら、今すぐ結婚しよう!」
「ええっ?」
ヒューゴからのまさかなプロポーズに頭が真っ白になった。
「エリサ、好き。ずっとずっと好きなんだ。初めて会った時から毎日、毎秒、今だってどんどん好きになってる。エリサも俺と同じ気持ちでいてくれたなんて……夢みたいに嬉しい!」
ヒューゴの頭が肩に乗せられて、ぐりぐり擦り付けられる。
「えっ、あの、ちょっと待って。頭がついていけてない」
好きだって言ったけど、恋に気づいたばかりの私の好きと、ヒューゴの好きは同じなのかな? 好きが恋の好きなら同じってことなの?
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