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「ごめん、エリサ。いきなりすぎて驚いたよね?」 「うん……」  ぺたんと耳を下げながらヒューゴに見つめられる。 「俺、本当は不安なんだ……。いきなり勇者だって言われて、今日中に王都に発つって言われて頭が真っ白になってて──それに、もしかしたら死んじゃうかもしれない……」  ヒューゴの震える声に胸がキュッと締め付けられた。ヒューゴはきっと私の何倍、ううん、何億倍も怖いに決まってる。両腕を広すぎる背中に回して優しくさすれば、また耳を擦り付けられた。 「ねえ、エリサ……俺、エリサと結婚できたら魔王討伐を頑張れると思うんだ。だから、俺と結婚してくれないかな?」  私は頷く。これから命をかけるヒューゴのお願いを断るなんて選択肢はなかった。ぶんぶん風を揺らす尻尾の音が聞こえたと思ったら、頬に手を添えられた。 「エリサ」  聞いたことがない程に甘く私の名前を囁く。青色の瞳は甘さがにじみ、頬に触れる手のひらから伝わるヒューゴの体温。ヒューゴのひとつひとつに私の心臓が反応して、爆発してもおかしくないくらい鼓動が速くなる。  ヒューゴの顔が近づいて、肌の匂いがしたと思ったら、私の唇にやわらかな唇が触れた。胸に広がる甘酸っぱい気持ちに心が嬉しくて震えてしまう。 「……っ!?」  大きな手で後頭部を押さえられ、ぬるりとしたものが唇を割って入ってくる。驚きすぎてヒューゴから離れようとしても、頭も身体も固定されてびくともしない。 「んんっ、ひゅー、ん……っ」  ヒューゴに話しかけようと思っても、言葉は全部呑み込まれてしまう。好きな人としか絶対できないことをされて、ヒューゴの熱で私の吐息も甘く染まっていく。胸板を押していたはずの腕は、縋るように添えているだけになっていた。
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