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「はあああ〜やっぱり離婚だよね……」
勇者と聖女の婚約を祝福する記事を読んで、机に突っ伏した。どうしよう……。私と結婚していることがヒューゴの幸せの邪魔をしている事実に気づいてしまったら、頭を殴られたみたいに目が覚めた。
ヒューゴと離婚しよう。白い結婚のまま三年間過ごしたから結婚をなかったことにできる。うんうん、そうしよう。だって、田舎の村に住む茶髪桃目の平凡な薬師の私が、勇者のヒューゴと一瞬でも想いあえたことが奇跡なんだから。
ウルーフ家で働く人たちは、平民の私にとてもよくしてくれている。素敵なドレスや心のこもった食事、薬草園と薬を作るための部屋まで用意してくださった。でも、聖女様と結婚するヒューゴの家に私が居ては困ってしまうだろう。良くしてくれていたからこそ迷惑をかけたくない。
「これからどうしようかな?」
私は、私とヒューゴが結婚したことを知っている人がいないところに行きたい。この国を出れば、ヒューゴと聖女様の話も聞かなくていいし、薬師の資格があれば自分一人くらい食べていけるはず。折角だから見たこともない薬草の生えている国に行ってみようか?
なんだかワクワクしてきた。よし、そうと決まれば善は急げ。鞄に詰めれるだけ薬を詰めて身支度を整えていると、外が騒々しくなってきた。
「奥様! 旦那様が、ヒューゴ様が戻られました……っ!」
「え?」
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