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17
慌てて外へ出ていくと、以前より精悍になったヒューゴと兎獣人の女性が一緒に立っていた。一枚の絵のような完璧な美しさの二人。誰なんて聞かなくても聖女様だって一目で分かった。
「ただいま、エリサ」
柔らかく微笑まれて胸が苦しくなる。ああ、ヒューゴの隣にいたのは私だったのに。醜い嫉妬が私を黒く染めていく。
「おかえりなさい…………勇者様」
「えっ、エリサ、どうしたの?」
困惑するヒューゴを心配そうに見つめる聖女様を見たら、もう駄目だった。これから結ばれる二人をこれ以上見ているなんて私には無理。もう終わりにしたくて、ヒューゴを見上げた。
「私たち白い結婚だったので、離婚してください」
「…………は?」
目をこれでもかと見開くヒューゴに、先ほどまで読んでいた新聞を押し付ける。動揺して手に持ってきてしまったけど、結果オーライ。
「絶対に結婚のことは他言しないと誓いますし、私は今からこの国を出ます。どうぞ聖女様と幸せになってください」
新聞の記事に目を落とすヒューゴに言いたいことを告げ、立ち去ろうとしたのにヒューゴの腕の中にいた。なんで?
「エリサ、かわいい。やきもち妬いてるエリサ可愛すぎる」
「っ、は、離して……っ!」
「はあ……久しぶりのエリサの匂いたまんない。やきもち妬いてるエリサも大好きなんだけど──聖女は魔法使いと結婚する予定だよ」
「え? 嘘?」
「ううん、本当。聖女のタイプは、糸目つり目だからね。ほら、あそこにいる魔法使いのヴィクスンは、キツネ獣人で糸目でしょう?」
視線を送ると、本当に聖女の隣に糸目なキツネ獣人の魔法使いが立っていてびっくりするしかない。
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